ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸

ここが家だ―ベン・シャーンの第五福竜丸

ここが家だ―ベン・シャーンの第五福竜丸


ベン・シャーンの、第五福竜丸事件をとりあげた連作「Lucky Dragon Series」に、
アーサー・ビナードが文章を添えて生まれた絵本です。


その絵の力強さに圧倒される。
ベン・シャーン自らの晩年の言葉そのままに「石に刻む」
石に刻むようにして描かれた線は、読み手の胸に刻み込まれる。
力強くて怖ろしくて悲しい。


添えられた詩人ビナードさんの文章は、極力抑え込まれているようだ。
絵と文章とが、圧倒的な盛り上がりになって迫ってくるのは、ここ。


「太陽がのぼるぞぉー!」
この本はなんだろう、と思った。
神話か。黙示録か。
終末の始まりを語る怖ろしい神話のようだ。


ベン・シャーンの「Lucky Dragon Series」を絵本にするにあたって、
ビナードさんは、なぜタイトルを「これが家だ」としただろう。
第五福竜丸は、遠洋ヘマグロを捕りに行く漁師たちが共に暮らす「家」であったろう。
そして、命がけで帰ろうとした日本、焼津が、彼らの家族の待つ本当の「家」であったろう。
家は帰る場所だ。


2011年3月5日、丸木美術館では、企画展『第五福竜丸事件 ベン・シャーンと丸木夫妻』に伴って、
第五福竜丸元乗組員大石又七さんとアーサー・ビナードさんの講演があったそうだ。
そのときビナードさんは「私たちは皆、第五福竜丸に乗っているのだ」と語ったそうです。
岩波ブックレット第五福竜丸から「3.11」後へ』による)
そうであるなら、わたしたちが命がけで帰る港はどこなのだろう。