8月の読書

8月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:2899ページ

原爆の図―THE HIROSHIMA PANELS原爆の図―THE HIROSHIMA PANELS
丸木美術館で出会った『原爆の図』〜第一部『幽霊』〜本当に幽霊のようになってしまった人たち…でも、これは群像ではない。一人一人、みんな違う人生を持っていた人間なのだ。彼らの足元にいた美しい赤ん坊の目が忘れられない。人と事柄のめぐりあわせで、この絵に会いに行くことができた。きっとまた行く。絵の中の人びとの話を聞きに。
読了日:08月30日 著者:丸木 位里,丸木 俊
ブリギッタ・森の泉 他1篇 (岩波文庫)ブリギッタ・森の泉 他1篇 (岩波文庫)
正直、あまりのまっすぐさに驚いたのも事実。でも、うそっぽい、とは思わなかった。ここまで臆面もなくまっすぐだと、いっそ清々しい。美しい荒野は、ただ美しいだけではない。そこに暮らす人のおだやかな表情は、長い年月の不屈の精神力によって作られたもの。厳しい荒野を舞台に、濁りなく善きものを掬いあげる。信じる。そうしたい。
読了日:08月29日 著者:シュティフター
ツォツィツォツィ
この国で黒人として生きるということの意味が絶望的な確かさで伝わってくる。印象に残るのは、シャバララの「生きたい」という言葉。最後の場面の不思議な明るさ、爽やかさは、あの「生きたい」という言葉に繋がっているように感じた。もう一つ印象的だったのは、名前。名まえを覚えていない、という人の虚ろな闇。本当の名前を思い出すことは、勝利の証のよう。
読了日:08月27日 著者:アソル フガード
松居直自伝 (シリーズ・松居直の世界)松居直自伝 (シリーズ・松居直の世界)
本の帯に書かれた言葉「目には見えない大切なものを育み伝える」自身がそのように育てられた人であったからこそ、伝えられる力、言葉。創刊当時の『母の友』も『こどものとも』各号、作家・画家・編集者が渾身の力を尽くした挑戦だった。まるで、植物が小さな芽を吹き、どんどん伸びて、森になっていく様子を、早回しで一気に見ているようだった。
読了日:08月24日 著者:松居 直
小川未明集 幽霊船―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)小川未明集 幽霊船―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)
怖くもあるが、むしろ悲しくなるようで、幻想的な物語は妖しく美しい魅力を放つ。一方で、人間(自分と同じ人間)だけが出てる物語は、怖い。正体がさっぱりわからない、何を考えて、何を目的にして何をやらかすのかわからない人間の怖さは、妖魔よりも幽霊よりも、死神よりも、ずっとずっと上だった。
読了日:08月22日 著者:小川 未明
百年の孤独百年の孤独
ある町の興亡と表裏一体に描かれるある一家の物語。最初から最後まで、なんという嵐が吹きまくっていたことか、と思う。大勢の中心にいて際立つ孤独。暗闇と静けさの中で、自分の中に深く降りていく孤独の充実。少しずついつのまにか塵のように降り積もって行く孤独。だけど、それは、なんて可笑しくて優しいのだろう。…百年がただ夢のようだ。
読了日:08月20日 著者:G. ガルシア=マルケス
秘密の心臓秘密の心臓
猛々しく美しい。大胆で繊細。ジョーの中には虎とヒバリがいる。虎とヒバリが共存する、というのは、大きな意味があると思う。ナンティはいう。「すべての終焉の日に、全ての始まりの日をみつけだせるのかもしれない」少年が大人になるということをこの言葉に重ね合わせてみたい。子どもの日を終わらせることが、新しい自分自身の始まりなのだ、と。
読了日:08月11日 著者:デイヴィッド・アーモンド,山田 順子,David Almond
ロブロィエクの娘ロブロィエクの娘
悩み、恋する若者だった嘗ての主人公たちは、どんどん大人になり、その子どもたちが活躍する時代になってきた。だからといって、大人たち、物語の脇役に引っ込みっぱなしというわけではない。人生は、物語は続く。激動の町の片隅、貧しくも心豊かな人々の存在に、ほっとする。大事なもの、変わらないものは何か。彼らに教えられることは多い。
読了日:08月08日 著者:マウゴジャタ ムシェロヴィチ
さがしています (単行本絵本)さがしています (単行本絵本)
使いこまれた道具と人とは相棒のようだ。だけど、ある日、突然、置き去りにされてしまったら。道具は律義にずっと相棒をさがしているのだろうか。物語の続きが始まるのをずっと待っているのだろうか。あの刻限のまま止まった時計、ぼろぼろの軍手、今食べるばかりの弁当箱…とても続けて読むことはできなかった。最後の「声」に、とうとう涙腺が決壊した。
読了日:08月07日 著者:アーサー ビナード,岡倉 禎志
朽ちていった命―被曝治療83日間の記録 (新潮文庫)朽ちていった命―被曝治療83日間の記録 (新潮文庫)
一瞬の閃光が、「いのちの設計図」とも呼ばれる染色体を内側からずたずたにする、その恐怖に鳥肌がたつ。会社をあげて核の怖ろしさを認識していない会社。人ごとではない。核って怖いね、原発なんていらないね、と漠然と考えながら、のうのうと狎れてきた自分自身の鏡のようでもある。読み終えた今日は8月6日。67年目の原爆の日
読了日:08月06日 著者:
かえるのそらとぶけんきゅうじょかえるのそらとぶけんきゅうじょ
かえるの純粋な思いや試行錯誤がまぶしくて素敵でした。夢はきっときっとかなうね。三匹が暮らすどんぐりの木のおうちがあまりに素敵。『おおきなきがほしい』を思い出します。あの絵本からもう30年もたつのだものね。30年かけて『おおきなきがほしい』の「ぼく」の夢がかなったようににも思えてうれしくなっちゃう。
読了日:08月04日 著者:村上 勉
女が嘘をつくとき (新潮クレスト・ブックス)女が嘘をつくとき (新潮クレスト・ブックス)
嘘が絢爛豪華であればあるほど、嘘話の語り手の日常の味気なさに思い至り胸が痛む。最後まで読んだとき、嘘をつかない女の生きざまに気がつく。この物語は「嘘をつく女」の物語ではなく「嘘を聞く女」の物語だったのだ、と知る。希望につながる全うさ、思いがけないところから吹き出す芽に静かに感動する。
読了日:08月02日 著者:リュドミラ ウリツカヤ

2012年8月の読書メーターまとめ詳細
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