かのこちゃんとマドレーヌ夫人

かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (ちくまプリマー新書)

かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (ちくまプリマー新書)


何が一番素敵かといえば、この家族の距離感かもしれません。
夫婦のあいだ、親子のあいだ、人と動物のあいだの。
とてもさりげなくて自然なのだけれど、とても微妙で、
押しつけがましさがまるっきりなくて。
だけど、目配り・心配りのしっかりした確かな愛情をひしひしと感じる。
これ以上ないって感じの絶妙な距離感がすてきなのだ。
人と人のあいだをさわさわとよい風が通るような。
少し(よい感じに)古めかしいかもしれない。家族も、暮らす家も、まわりの景色も・・・なんとなく。
庄野潤三さんのエッセイを読む気持ちのよさに通じるかな。
からだがのびのびして、ほっとする、安心する。


こういう家族の話なんだ、としっかり納得していれば、あとは、何がおこっても、どんな事態に至っても、絶対ついていける、と思った。
実際、距離感だけではなくて、一人ひとりの人物、一匹一匹の動物が、とっても素敵なのだ、と、すぐに気がつくのだけれど。
猫の目から見た文章では私は猫になり、軽やかな体で歩き、跳び、眠る。
子どもの目になれば、ゴムまりのようにはずんだり、しおれたりしながら、あれこれの不思議に驚き、今日を力いっぱい生きる。
そして、親の目になれば、ただ慈しむ。
それがとても自然に、すうっとそうできる(ような気がする)
そして、それがとても心地よい。


好きなのは、かのこちゃんが「知恵が啓けた」ことを自覚する瞬間。
うんうん、わかるなあ、その感じ。
おばさんでもこんな感じになることがあるってことは・・・未だに開発の余地があるんだ、めでたい私の知恵^^
それから、第四章全部。「マドレーヌ、マドレーヌ・・・」にはつい夢中で唱和したくなってしまった。
いつかどこかで、また、再会することを願いながら、続きの物語を夢みています。