4月の読書

4月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:4064ページ

ブエノスアイレス食堂 (エクス・リブリス)ブエノスアイレス食堂 (エクス・リブリス)
凝りに凝った料理の数々には(見事、とは思うものの)これは「食べもの」ではないような気がしてくる。いや、たぶん、最初の場面に驚いて胃が固まってしまっているんだ。「毒まんじゅうを食らう」という表現があるではないか。食べる、ということは至福であると共に、同じくらい後ろ暗いものを感じる。なんだか毒気にあてられてしまったようで、今夜、何も作りたくないなあ。
読了日:04月29日 著者:カルロス バルマセーダ
文学の絵本―「ちくま日本文学全集」の装画文学の絵本―「ちくま日本文学全集」の装画
作家別の60枚の表紙画を一冊で見るって、ありそうでなさそうな体験でした。どの絵も一見静か。でもよく見ると音が聞こえる、空気が動く。絵のなかから物語が始まるような気がする。最後に「表紙の絵のこと」として安野光雅さんの各絵についてのひとことを読むと、絵が手品みたいに思えてきます。こっそりここで種明かししてもらっているみたいなのだ。
読了日:04月26日 著者:安野 光雅
絵のある自伝絵のある自伝
前にすすみ、後に戻り、ぐるっとねじれたり、妙に意固地なところを見せたかと思うと、大胆ないたずらをしかけたり、楽しみながら読んでいると、突然、言葉の意味深さを思って、はっとしたりした。この感じって、安野さんの絵本を見ているような感じではないか。80年の間に、出会い、去って行った人々に、おぉーい、元気か、と呼びかけているようだった。
読了日:04月26日 著者:安野 光雅
飛ぶ教室 29(2012春)―児童文学の冒険飛ぶ教室 29(2012春)―児童文学の冒険
『ソラガアオイ」朽木祥: 動物の真っ直ぐさと、子どもの真っ直ぐさが、澄んだ空の色に混ざって行くような気がする。重たい話、辛い話であるのに、少しずつ心が澄み渡って行くようで、素直になっていくのを感じています。
読了日:04月25日 著者:山田 美香
チェスをする女チェスをする女
共同体の頑なさは、「人は自分の信じたいことしか見ないものだ」に通じるけれど、「信じたい」の「たい」気持ちは、きっかけさえあれば、割と簡単に変わるのかもしれない。平凡なエレニの中で感受性が目覚め、快進撃していく姿を見るのは気持ちがよい。彼女をめぐる人々も可愛い人たちではないか、厄介だけど。エーゲ海に浮かぶ美しい島。深呼吸したくなる。
読了日:04月23日 著者:ベルティーナ・ヘンリヒス
ジェンナ 奇跡を生きる少女 (SUPER!YA)ジェンナ 奇跡を生きる少女 (SUPER!YA)
たくさんの重たく難しいテーマ・問いかけに対して誠実であろうとすればするほど、どんな「結末」もきっとベストではない。ある面から言えば、この結末は、美しい善なのだ。(P.369の太字で書かれた三文字!噛みしめるように味わう)でも、別の面では善とはいえない。さらに別の面では、矛盾に満ちている。ラストで感じる頼りない気持ちはそういうことなのだ、と思う。
読了日:04月21日 著者:メアリ・E. ピアソン
伊藤まさこの雑食よみ 日々、是、一冊。伊藤まさこの雑食よみ 日々、是、一冊。
雑食、とは言っても、伊藤まさこさんらしい本棚、と思う。本棚は語るのね。本や出来事のチョイス、それに寄せる文章・写真の気取りのなさが、気持ちいい。ゆったりとくつろがせてくれる。素敵な本屋さん(そして、素敵な店長さんがいる)の紹介が好き。本棚のある風景が好き。
読了日:04月20日 著者:伊藤まさこ
ロスト・シティ・レディオ (新潮クレスト・ブックス)ロスト・シティ・レディオ (新潮クレスト・ブックス)
内戦後の混乱、緘口令と恐怖によって押さえつけられた国が舞台。ミステリアスな展開。緊迫した空気、のはずなのに、しっとりとした空気を感じるのです。ノーマの声が、行方不明者の名を呼びかける。名まえを呼びかけることによって、この場所にとどめているような気がするのです。名まえまでは行方不明にはならない、忘れないって。
読了日:04月17日 著者:ダニエル アラルコン
もうすぐ絶滅するという紙の書物についてもうすぐ絶滅するという紙の書物について
絶滅どころではない、紙だからこそ生き残るのだ。わかり切った話は、さっさと終わりにして、本を巡る話。一冊しかない本を生涯繰り返し読んだカリエール父の話が好き。一冊に深く親しむ読書が、眩しい。恵まれた境遇での自分の雑な読書を振り返り、恥ずかしくなる。また「読書依存症」という言葉にどきっ。
読了日:04月15日 著者:ウンベルト・エーコ,ジャン=クロード・カリエール
黄色い雨黄色い雨
こんなにも死に近づいたのに、近づけば近づくほど、逆に、極めて穏やかな気持ちで生のほうへ顔を向けているような気持ちになる。それも不思議な気持ちだ。たぶん、死があまりに透明で静かだと感じるから。それと、あまりに親しく感じすぎるから。ただ優しい沈黙に包まれているような読後感です。
読了日:04月12日 著者:フリオ・リャマサーレス
ろんどん怪盗伝 (大人の本棚 )ろんどん怪盗伝 (大人の本棚 )
ルパン全集(南洋一郎さん翻訳の)にわくわくした子どものときを思い出す痛快さ。ちょっと古くてのんびりとした冒険活劇を楽しみつつ、18世紀イギリスの町や田園、森などにも思いを馳せています。
読了日:04月11日 著者:野尻 抱影
あれから―俵万智3・11短歌集あれから―俵万智3・11短歌集
子のために母は動く。でも、その母を力づけ、動かすのは、きっとなんでもない子どもの姿なんだ。非日常で切羽詰まった時間に、どうして普通でいられるだろう。でも、子どもが日常を連れてきてくれた。子ともが喜びをもってきてくれた。そんなふうに思った。
読了日:04月09日 著者:俵 万智
インド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)インド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
旅の思い出が連なりインドになる。海の波のようで心地いいリズム。このままずっといくのかな、と思ったら、終盤に天地がひっくり返るような驚きが待っていた。それなのに、何もなかったようにおさまっていく。でも、わたしは目が覚めてしまった。波は寄せて返して寄せて返して…だと思っていたら、返して寄せて返して寄せて…だったんだね。それとも全部夢? 作者の不眠症うつったかな。
読了日:04月08日 著者:アントニオ タブッキ
クロックワークスリー マコーリー公園の秘密と三つの宝物クロックワークスリー マコーリー公園の秘密と三つの宝物
時代も舞台も小道具も、登場人物も、なんて魅力的。沢山の秘密にわくわく。三人の子が、それぞれに宝をさがす。その宝は、自分を解放する力。未来への希望。それを手に入れるために、互いに力を借り、貸し、友情も信頼も手に入れていくのが素敵。物語の面白さを堪能しました。でも、この物語、もっと大きな冒険の入口みたい。続き、いつ読めるのだろう。
読了日:04月06日 著者:マシュー・カービー,平澤 朋子
皺 (ShoPro Books)皺 (ShoPro Books)
すごくよかったんだけど、感想書くのはとっても難しい。年をとる事・忘れる事は、それまで繋がっていた世界から、切り離されていくこと。自分を待ち受ける未来・あの空白は怖ろしい。だけど、「世界」から切り離されてそこにいる人を「世界」のほうでは忘れていないのかも。自分のこれからの暮らし方、人との関わり方などもつくづくと考えてしまった。「インチキね」が好きでした。 
読了日:04月04日 著者:パコ・ロカ
新編 百花譜百選 (岩波文庫)新編 百花譜百選 (岩波文庫)
絵も文章も見たまま、ありのままで、感情をあらわしたり、装飾をほどこしたりしていません。毅然として、潔く、すっきり清々しい。最後の絵は、お見舞いにもらったユリの花。活けられているふうではなくて、寝かせておいた花を描いている。寝かせられた花の花弁は少し歪んでいる。病気療養の苦しさを耐えているにちがいない作者の姿を重ねていた。
読了日:04月03日 著者:木下 杢太郎
残念な日々 (新潮クレスト・ブックス)残念な日々 (新潮クレスト・ブックス)
捨てた家族のことを語り、その中に幼い自分を置く。そうして、もう、そこに自分はいない、いられないということを確認してしまったみたい。この微妙な立場から、わたしは彼らを眺める。そして、懐かしいような親近感で、笑っちゃう。
読了日:04月02日 著者:ディミトリ フェルフルスト
ふるさと60年 (日本傑作絵本シリーズ)ふるさと60年 (日本傑作絵本シリーズ)
同じ場所の移り変わりを続けて眺めていると、当時、人々が何を大切にしていたか、どんな未来を思い描いていたか、ということまで、うかがい知ることができる。『母さんの小さかったとき』を思い出した。あの本の母さんの子どものころの思い出が、この本のおばあちゃんの思い出に重なる。かあさんは、おばあちゃんになっちゃったんだなあ。いつの間にか時は流れていたのです。
読了日:04月01日 著者:道浦 母都子

2012年4月の読書メーターまとめ詳細
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