- 作者: 安野光雅
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1993/10
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 3回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
森鴎外、正岡子規、夏目漱石・・・ちくま文学全集・全60巻の表紙を飾る絵のずらり展覧会。
左ページが絵、右ページに全集からの短い引用文が載っています。
ちょっと面白い体験だった。
まず、何も考えず、ただ絵だけを眺める。
それこそいろいろな絵が、いろいろな描き方で、でもやっぱり安野光雅的(?)に描かれている。
どの絵も一見静かに見える。でもよく見ると音が聞こえる、空気が動く。絵のなかから物語が始まるような気がする。
そして、ときどき妖精の仕業かと思うようなお茶目な「何か」が、あたりまえのような澄ました顔で仕込まれていたりすることもある。
それから、右ページの文豪の名まえを見て、「ああ、やっぱり」と思う。
絵から、作家の作品の名前(必ずしも引用文とリンクしないのもいたずらっぽくて楽しい)まで浮かぶこともある。
なんとなく、この人の空気ってこうだなあ、と思うのもある。
筆のタッチまで。色彩まで。
読んだことのある作家、名まえだけは知っている作家、中には名前さえ聞いたことのない作家もいるので、大雑把なのだけど。
そして、最後に「表紙の絵のこと」として安野光雅さんの各絵についてのひとことずつが載っています。
まとめて読むと、なんだか絵が手品みたいに思えてきます。こっそりここで種明かししてもらっているみたいなのだ。
樋口一葉のところの、小学生の会話がとても素敵だった。
文章を読んでから、再び絵を見れば、絵がタイムスリップしたのか子どもがタイムスリップしたのか、
横丁から聞こえてくる内緒の声がある。かわいらしいのに、ちょっとドキドキする感じで。
種明かしどころか、さらに魔術の深みに嵌っていく。
カバーの見返しに、「カバーと扉の模様は立体視ができるようになっています」と書かれている。
何なの、立体視。
扉のほうは、ちょっと距離を置いてみているうちに、ぼんやりと浮かび上がってくる形に気がつき、にっこり。
でも、カバーは?
「目の力をぬいて・・・」とも書いてあるけれど、ついつい力いっぱい見開いてじいっと見てしまう。
これは、いったいどんな仕掛けが隠されているのかな???