ソラガアオイ ( 『飛ぶ教室29 児童文学の冒険』より )


『ソラガアオイ』  朽木祥 


一番最初に一番酷いことが起きてしまった。一瞬、このあとを読みたくない、と思ってしまった。
どんなに言葉を尽くしたって、もう二度と元通りになれるわけがない。
どうするっていうのだろう・・・
・・・それが、こんなに静かな濁りのない気持ちで読み終えることになるとは思わなかった。
幸福とか再生とか、全然そんなことじゃないんだと思う。
そんなことを思う必要もない場所(または、それ以前の場所)に、わたしは連れてきてもらったんだと思う。


両親の気持ちを思えば、何も言えるわけない。言えない。
言えないけれど、一人で耐えている「僕」の寂しさや、健気さはたまらなかった。


「僕」は、クマオの中に、自分を見ていたのではないかな。
「僕」が、クマオに対して感じたことや、してあげたことは、
自分のことをそんなふうに考えてほしかったし、してほしかったんだろう。
そうして、本当は「僕」がすごくすごく会いたかったんだろう。


ボールの飛んだ先で「二人」は、何を確かめあっていたのだろうか。
わからないけれど、わかるような気がする。
この家族のなかで、一番小さな存在に、ぽっと明かりがともったような感じだった。
わたしの中にも、まるくて温かいものがとびこんできたような気がした。
嬉しいって言ってもいいのかな。


動物の真っ直ぐさと、子どもの真っ直ぐさが、澄んだ空の色に混ざって行くような気がします。
重たい話、辛い話であるのに、少しずつ心が澄み渡って行くようで、
素直になっていくのを感じています。