3月の読書

3月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:3174ページ

森の紳士録―ぼくの出会った生き物たち (岩波新書)森の紳士録―ぼくの出会った生き物たち (岩波新書)
山歩きの間に出会った生きものたちの「物語」 俳句や落語、民話など、さまざまな豆知識などをひきながらの気品ある文章は、素朴で温かいです。紳士同志が、名刺を交換しあい、丁寧に挨拶をかわしているよう。ことに好きなのは「アキアカネ」の章。谷から湧き上がるアキアカネの大群のダイナミックな場面と、肘にとまって静止する一匹のトンボのコントラストが鮮やかだった。
読了日:03月29日 著者:池内 紀
鉄のしぶきがはねる鉄のしぶきがはねる
「ものづくりは、楽しいからだ!」という言葉がまぶしかった。楽しいと、無機質だと思っていたものも、弾力がでてくるんだ。それに気がつくのは、やっぱり「楽しい」気持ちで何かに打ち込んでいる人なんだろうな。そう思ったら、「なんで部活モノに旋盤・・・」という気持ちがするっと消えて、彼らをひたすら応援していた。
読了日:03月28日 著者:まはら 三桃
どこいったんどこいったん
最後に、今度は、読み手のわたしが、この問いかけを引き継ぐことになろうとは思ってもみませんでした。ボーゼンとして、声を落として「どこいったん・・・」
読了日:03月27日 著者:ジョン・クラッセン
瓦礫の中から言葉を―わたしの<死者>へ (NHK出版新書 363)瓦礫の中から言葉を―わたしの<死者>へ (NHK出版新書 363)
空っぽな言葉を使う、ということは、自分を殺すことなんだな。どうにも気持ちが沈んでしまうのは、起こっていることの怖さよりも、生きた言葉を使えていないからだ、こんなにわたしの言葉はからっぽな借り物だなあ、情けなくなるけれど、この情けないところから「わたし」の言葉を一生懸命みつけていこう。
読了日:03月26日 著者:辺見 庸
なのはな: 萩尾望都作品集 (コミックス単行本)なのはな: 萩尾望都作品集 (コミックス単行本)
ナホちゃんが種をまいたのは、この国に住んでいるわたしたちみんなの心の中だ。そう思ったとき初めてわかった。私も花が欲しかったんだ。種が芽をふいて、たくさんのなのはなを咲かせてくれることを夢見つづけたいと思う。五つの作品のうち、最初と最後のナホちゃんの物語が好きです。切なくて、美しい。鎮魂の物語であり、静かに希望に続いていく物語でした。
読了日:03月23日 著者:萩尾 望都
バルザックと小さな中国のお針子バルザックと小さな中国のお針子
この物語は、おぞましい時代や権力への皮肉だろうか。小さな者たちの小さな勝利の賛歌でもあるだろうか。さらに、若者たちの不器用にして甘やかな初恋の物語。文学や文化への焦がれるような憧れの物語。誇りの物語でもある。さらに、女は強い、希望だわ、と唸る。こんなにたくさんの「好きになるしかないじゃない」の要素があふれている。読後感はよいに決まっている。からりと清々しい。
読了日:03月18日 著者:ダイ・シージエ
エリア随筆抄 (大人の本棚)エリア随筆抄 (大人の本棚)
『幻の子供たち』美しい。曽祖母が管理していたお屋敷の思い出、古風な庭園の匂いや温度まで。通り過ぎていく二人の子どもの幽霊やそれについての曽祖母の言葉など、そして何もかもが霧に包まれるような幕の引き方まで、ため息。『グリーン・ノウ』を思いだし、ここだけ切り抜いてとっておきたくなる。次いで『南海商会』『書物や読書についての断章』『古陶器』もよい。
読了日:03月14日 著者:チャールズ ラム,庄野 潤三
陽気なクラウン・オフィス・ロウ (講談社文芸文庫)陽気なクラウン・オフィス・ロウ (講談社文芸文庫)
ラム、ラム、チャールズ・ラムに関する文章が70%くらいか。いくら語っても語り尽くせないとばかりに。悲しいけどついていけてない。でも気になる。ラムの「エリア随筆抄」並行で読み始めています。ラムの隙間に書きこまれている庄野夫妻の旅のスナップ(?)は、やはり楽しい。著者のおおらかで屈託のない人柄がにじみ出る文章にほっとする。
読了日:03月13日 著者:庄野 潤三
刑務所図書館の人びと―ハーバードを出て司書になった男の日記刑務所図書館の人びと―ハーバードを出て司書になった男の日記
リベラルな明るさに驚き、ここが刑務所内であることや、現実の厳しさを束の間忘れる。形状の変わった青春記なのではないかと錯覚してしまう。だけど、ハードな現実は否応なしに迫る。受刑者たちに、更生の道はこんなに厳しいものか。塀の外であれ中であれ、図書館とは一体何だろうと何度も問いかける。今、図書館は、出会いの場所だと思っている。
読了日:03月11日 著者:アヴィ スタインバーグ
ピース・ヴィレッジピース・ヴィレッジ
だれかのあとをついていくのではなくて、自分で考えて自分で決める決心をするって勇気がいる。大人でも。「ひとり」という言葉が心に残る。ひとりは寂しくて厳しい。でも、一人ってことはかけがえのないことでもあるのだ。飛行機の轟音ばかり、そしてその音に繋がる戦争のことばかりが頭にあったけれど、轟音がぱたっとやんだと静けさの中、遠くから聞こえるフクロウの声が心に残りました。
読了日:03月08日 著者:岩瀬 成子
冬物語冬物語
清々しいまでにはっきりした主題が、寓話のようだ、と思うし、とっても良質の児童書の雰囲気にも似ている。自分に忠実に生きる人に喝采し、ほんの端役かと思った人の内にある高貴な魂に触れて喜び、押しひしがれた魂の虚ろさを痛ましく思う。物語途中の文章の一行一行を宝物みたいに拾い集めたくなる。その一行一行が登場人物たちの品性となって、薫り立つようなのだもの。
読了日:03月06日 著者:カレン ブリクセン
ルーカス・クラナッハの飼い主は旅行が好き (中公文庫)ルーカス・クラナッハの飼い主は旅行が好き (中公文庫)
タオル、グラス、電話、ルーム・サービスに両替、鍵の話も・・・その国その町そのホテル備え付けの品々は、どんな相手に対してもこれほど雄弁なのだろうか。語らせ上手な聞き手(旅行者)にだけ、語るのじゃないかな。山本容子さんみたいな。こまごまとした品々に、冒険のワクワクが詰まっている。グラスの話、音の話、印象に残る。楽しかった。
読了日:03月04日 著者:山本 容子
へそまがり昔ばなし (ロアルド・ダールコレクション 12)へそまがり昔ばなし (ロアルド・ダールコレクション 12)
シンデレラも白雪姫も、言われてみれば、いい子というよりも、賢くない。自分の道を自分で切り開いていこうという気概もない。ダールは、彼らを、いきいきとした現代っ子に鍛え直してしまう。これくらい賢くなれば、世知辛い世を渡って行くには充分。(でもきっと友だちいなくなりますよ・・・)オチで気に行ったのは「三びきのクマ」 敵もさるものなのだからこそ、「やった」と、気持ち良く笑った。
読了日:03月02日 著者:ロアルド ダール
人間の土地 (新潮文庫)人間の土地 (新潮文庫)
空を飛ぶことを夢みることは、大地の掟に結ばれながらも、生き抜く強さを持った者だけに許されるのではないか。生半可な憧れや、見切り発車が許されるような甘い世界ではない。「空」ってなんだろう。決して飛行機の操縦桿を握ることのないわたしにとっては、精神的な高みのように思えました。
読了日:03月01日 著者:サン=テグジュペリ

2012年3月の読書メーターまとめ詳細
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