チズラーズ

チズラーズ

チズラーズ


『マミー』の続編。『マミー』の三年後から物語は始まります。
七人の子どもたちはそれぞれに大きくなりました。
長男マークなんて17歳から始まって最終的には成人してしまいますしね。
すでに働いている子もいるおかげで、決して豊かではないものの、家計は、一作目に比べてずいぶん落ち着いてきたように思います。
ということで、アグネスは相変わらずこの家の要となって頑張っているのですが、
前巻に比べたら、母としての役割はずいぶん少なくなってきたのではないかな。
物語の中心は一人ひとりの子どもたちに移ってきました。


着々と自分の道を築いていく子がいたり、思いがけない才能を見いだされたり、したたかなのもいるし、
危なっかしさにハラハラしたり、とうとうはみ出してしまった子もいたりして、
ほんとうに十人十色、七人七色。
てんでんばらばらに、いろいろ悩んだり、試行錯誤したり、それぞれの個性のままに思い切り生きています。
そして、その時々に起きるさまざまな事件に、家族みんながそっくり翻弄され、
それを読むこちらも笑ったり心痛めたり、忙しいったらない。


タイトル『チズラーズ』は、ブラウン家の子どもたちのことを表しているそうです。
(どういう意味なのかはわからないのですが、アイルランド語でしょうか)
七人をひとまとめにした言葉がタイトルになっている、ということは、
こんなに多彩な個性を持った七つの星たちが、ここぞというときには、しっかりと家族・兄弟として、一つの塊になることができること、
その塊が羨ましいくらいに素敵だ、ということなのです。
そして、それを一番強く意識させられ、しみじみと沁み入ってきたのが、最後の一文でした。


この家族の物語を読む楽しみは、ちょっと古い児童書を読む喜びに似ています。
『ふくろ小路一番地』や『元気なモファット兄弟』を思い出します。
ラッグルズさん一家やモファットさん一家が、ブラウン家のご近所に住んでいたとしても何の違和感もないだろう。
彼らはみな逞しい。彼らは、毎日生活に追われながら、手を抜いてはいけない勘所を押さえている点で、共通している。
自分たちの人生に誠実で、真に賢い人たちである。
物語はストレートです。
その分、ぶれず、照れず、こんなにもまっすぐに、生きていく喜びと、人生の大切なものとを、謳いあげています。
読後感は、そのまま、アグネス・ブラウンの性格そのもののようです。