1月の読書

1月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:4296ページ

トーイン クアルンゲの牛捕り (海外文学セレクション)トーイン クアルンゲの牛捕り (海外文学セレクション)
古代アイルランド語からの翻訳とのこと。別の角度から見た『琥珀捕り』のようにも思えてくる。口承の言葉たちが文字となった文章の特有のリズムや言い回しが心地よい。豪胆な英雄クー・フリンだが、繊細、かわいらしさも感じる。ばたばた人は死ぬが、おおらかでちっとも血なまぐさくない。大体発端からしてしょうもない話であったが、豪放に笑いあげたいような爽快感もあります。神話いいねえ。何か続けて読みたくなりました。
読了日:01月30日 著者:キアラン・カーソン
ぼくらはわんぱく5人組 (岩波少年文庫)ぼくらはわんぱく5人組 (岩波少年文庫)
ペーチャは懲りないワルガキである。美化していない分、リアルだし憎めないのである。作者カレル・ポラ―チェクはアウシュビッツで痛ましい死を遂げたそう。そう思うと、この物語の平和な世界に散りばめられたあれこれの言葉が、胸を突かれるようなメッセージに変わる。少年の「よしてくれよ。ぼくじゃないんだ。勝手にだれかがはじめたんだよ」は強烈だった。最後の章題は「心のたからもの そして再出発」です。でも作者には再出発はなかったんですよね。
読了日:01月27日 著者:カレル ポラーチェク
メモリー・ウォール (新潮クレスト・ブックス)メモリー・ウォール (新潮クレスト・ブックス)
六つの物語が、「記憶とはなんなのだろう」という問いかけと呼応しあっているみたい。その呼びあいが、静かな波にゆすられているようでとても心地よい。とらえどころもなく、消え失せていくしかない記憶を、六つの物語の形にして、記憶受け取り人となったわたしたちのなかに、注ぎ込まれたような気がします。記憶は、本に似ている。メモリー・ウォールのカートリッジよりもずっと手間をかけて、すぐれた作家の手によって巻き取られた記憶を、読み手として、確かに受け取りました。
読了日:01月21日 著者:アンソニー ドーア
本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)
「画一的になっていくのが人間の運命でしょうか。滅びるようになっているんだと思うしかありません」私は自分の目で物を見、自分の耳で聞き、自分の言葉を発しているのだろうか。自分の手や足を動かすこと、時間のかかることを厭わない生き方をしたい。「今ファンタジーをつくれない」「ファンタジーをつくるのは子どもたち」ともいう。ファンタジーを作れるような幸せな子ども時代をどんなにしても保証してあげなければならないんだ、それが私たち大人の大切な仕事と感じました。
読了日:01月18日 著者:宮崎 駿
ウホッホ探険隊 (朝日文庫)ウホッホ探険隊 (朝日文庫)
必死で耐えて守って戦って。その必死さがあまりにせつない。その先に「僕たちは探検隊みたいだね」なんて、たまらないじゃないか。
読了日:01月17日 著者:干刈 あがた
湖畔湖畔
地味な物語です。後世に名を残すような華々しい業績も派手な舞台もない。一見つまらない、退屈な日々の中には、なんてたくさんのドラマがあるのだろう。こつこつと、自分の器量にあった道を辛抱強く歩いていく人々の、地味に見える人生もまた冒険なのだ、と思う。この静かな湖が抱えている豊かさは、知る人ぞ知る。それでいいんだね。
読了日:01月15日 著者:ジョン マクガハン
ブリギーダの猫ブリギーダの猫
六歳の少女には、戦争の意味も、ユダヤ人が迫害される理由も、そもそも迫害されているという事実さえもわからないのです。わからない、ということは、余計な偏見に邪魔されず、見るべきもの聞くべきものを直に感覚的にとらえることができる、ということ。時に、彼女の無邪気さ、危なっかしさにはらはらするのですが、彼女の見聞きしたものの映像は、もっともげな言葉よりも鮮やかに心に響きます。そして、彼女の無邪気さのせいで、いっそうやりきれなさが募ります。
読了日:01月12日 著者:ヨアンナ ルドニャンスカ
雪とパイナップル雪とパイナップル
「ひとりの子の涙は、人類すべての悲しみより重い」すでに、私たち誰もが、否応なしにこの重さを両肩に乗せてしまっているのだと思う。重くないよ、としらしらと平然としていることもできるし、その重さに打ちのめされてしまうことだってできるのだと思う。この物語は希望の物語。でも、この「重さ」を、きちんと受け止めないで、希望に顔を向けることはできない気がする。バナナが貴重であった時代に感じた幸福感を忘れずにいたい。
読了日:01月11日 著者:鎌田 實,唐仁原 教久
最後の冒険家最後の冒険家
どこかで聞いた「成功すれば冒険、失敗すれば無謀」という言葉を思い出しました。紙一重なんだ。紙一重のところのぎりぎりのところに見えるのはどんな光なのだろうか。冒険家神田道夫さんの音信が途絶えたあと、はるか上空で、一体何が起こっていたのたろう。サンテグジュベリの「夜間飛行」を思いだしていた。彼は、今も、天空はるかなところでまだ冒険の途上にいるのかもしれない、そんな気がしてくる。
読了日:01月10日 著者:石川 直樹
ワニの黄色い目(下)ワニの黄色い目(下)
コミカルでおしゃれ。軽やか明るい。ストーリーは最後まで目を離させない、たくさんの「これからどうなるの」と「びっくりびっくり!」がてんこ盛り。最後まで飽きない・・・けど、こってりとしたものばっかり食べすぎちゃった感じが少々・・・。
読了日:01月09日 著者:カトリーヌ・パンコール,Katherine Pancol
ワニの黄色い目(上)ワニの黄色い目(上)
アクの強い登場人物がぞろぞろ。ついていけるかなあ、と一抹の不安を覚えたけれど、ページを繰っているうちにどんどん引き込まれていく。肉食系の女たちにめまいがするけれど、ちょっと突き放した気持ちでおもしろく見物。男たちの軟弱さ・だらしなさが笑いを誘う。ジョーが初めての小説の構想を練っているところ、わくわくして、とても好き。彼女の小説の行方も楽しみに、下巻へ。
読了日:01月08日 著者:カトリーヌ・パンコール,Katherine Pancol
銀のスケート―ハンス・ブリンカーの物語 (岩波少年文庫)銀のスケート―ハンス・ブリンカーの物語 (岩波少年文庫)
幾つかの物語が縒り合わさって一つの物語になっています。六人の子どもたちが片道50マイルのスケート旅行をするところが一番好き。当時の大人が求める(悪く言えば押し付ける?)子ども像なども感じるのですが、同時に、大人が子どもの幸福をこんなにも願っているんだ、と感じさせるたくさんの場面が嬉しく、幸せな気持ちで読み終えました。子どもたちの小さなオランダ人としての誇りが微笑ましかったです。
読了日:01月06日 著者:メアリー・メイプス ドッジ
完訳 ナンセンスの絵本 (岩波文庫)完訳 ナンセンスの絵本 (岩波文庫)
原文五行詩と日本語訳、そして絵。一つの詩が三通りの方法で一ページに載っているので、読み比べるのが楽しい。でも、ナンセンスの面白みに正直ついていけない石頭が悲しかったです。どういう意味だろう、といちいち立ち止まって考え込んでしまってはだめなんだね。
読了日:01月04日 著者:エドワード・リア
ピエタピエタ
秘め事を大切に墓までも持っていこうとしている静かな女たち、そして、男たち。彼らをめぐる水のようにヴィヴァルディの思い出が流れる。この人たちすべてがすっぽりとヴェネツィアという豪華でいかがわしい町の化身のように思う。ラストシーンが、美しい絵になって心に焼き付いています。「死」から始まった物語は、「生」に引き継がれます。穏やかに。かすかに音楽が聴こえてくる。
読了日:01月02日 著者:大島真寿美

2012年1月の読書メーターまとめ詳細
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