ワニの黄色い目(上下)

ワニの黄色い目(上)

ワニの黄色い目(上)

ワニの黄色い目(下)

ワニの黄色い目(下)



アクの強い登場人物がぞろぞろ。
ついていけるかなあ、と一抹の不安を覚えたけれど、ページを繰っているうちにどんどん引き込まれていく。
肉食系の女たちにめまいがする。男たちの軟弱さが笑いを誘う。
登場人物の性格も、境遇も、あまりに極端で、現実離れしている。
おかげで、自分に引き寄せて感情移入する、というよりも、むしろ突き放した気持ちでおもしろく見物、という感じの読書でした。


好きなのは、主人公ジョーが初めての小説の構想を練っているところ、書いているところ、わくわくしました。
こつこつと生きてきた彼女、好きな世界があり(12世紀フランス史の研究者だった)、
自分の世界を楽しみ、過去に生きた人々と親しく会話していた彼女だから、
物語を書く準備はずっと前から整っていたのでしょう。
それでも漠然としたものを形にしていく苦しみ、歓びがいきいきと伝わってきて、
小説家は、こんなふうに本を書くのかなあ、と思ったのでした。


ストーリーは、コミカルでおしゃれ。軽やか明るい。
ごくごく地味で、しかも自信がひとかけらもない、というような中年女性(まわりがあまりに派手なので、かえって目立つ)が、
どうにもしょうがないんじゃないか、という状況からスタートして・・・でも大冒険をするわけでもなく(大冒険は彼女のまわり)
あくまでも地道に、こつこつとわが道を行く。こつこつと・・・が実を結ぶ物語、といえるだろうか、ね。
とはいえ、ストーリーは最後まで目を離させない、たくさんの「これからどうなるの」と「びっくりびっくり!」がてんこ盛り。
最後まで飽きない・・・けど、こってりとしたものばっかり食べすぎちゃった感じが少々・・・。ちょっと一休み。