10月の読書

10月の読書メーター
読んだ本の数:19冊
読んだページ数:4223ページ
ナイス数:146ナイス

ふしぎな家の番人たちふしぎな家の番人たち
「見かけどおりのものは、ひとつもなかったし、なにもかも、見た目以上のなにかになった」ことをちゃんと感じられる人にだけ開かれた世界がここにある。このお屋敷を舞台にしたたくさんの物語・・・ボストンさんも屋敷もなんて幸せだったのだろう、と思わずにいられない。そして、この世界の豊かさの中に招待してもらった読者もなんて幸せなのだろう。昔、「おばちゃんち(=私の家・古い農家だった)には座敷わらしがいる」と言いながらよく遊びに来てくれた近所の子のことを思い出しました。
読了日:10月30日 著者:ルーシー・M. ボストン
禁じられた約束 (Westall collection)禁じられた約束 (Westall collection)
男の子と父親の信頼関係、ちょっと羨ましい。亡くした人を弔いながら、自分の幼い日々も弔って、大人になる少年。一方で、躍動する命の塊のような恋人(そうではないものを想像できない恋人)とそれを持つことさえできない少女の恋がせつなくてたまらなかった。ホラー、そして冒険の物語なのですが、見方を変えれば、一人の少年の心の中の嵐を描いた物語とも思えました。近づいてくる爆音さえもファンファーレのよう。
読了日:10月28日 著者:ロバート ウェストール
チェスの話――ツヴァイク短篇選 (大人の本棚)チェスの話――ツヴァイク短篇選 (大人の本棚)
一話、二話、四話が好き。(三話もおもしろいのだ。でも少しテイストが違いますね) 魅入られたら最後、奥へ奥へ、さらに奥へ分け入っていくしかない何か(それも目に見えないもの)を持つことの、幸福と狂気。深入りすればするほどに、諸刃の剣の切れ味が勝るような感じ。怪しく怖しいけど、凡人のわたしは、ここまで行くことができる彼らが羨ましくなってしまう。
読了日:10月26日 著者:S.ツヴァイク
海に帰る日 (新潮クレスト・ブックス)海に帰る日 (新潮クレスト・ブックス)
穏やかな波のような単調な繰り返しに少々苛立ちます。波のまにまに浮かび上がる人たちも出来事も、泡のように淡泊で、すうっと消えていく。現実感がない。色がない。最後に、海の下から波を見せられたようで、初めて、ああ、と思った。波が生まれてくる先に目を向けたとき、どの波も同じ大きな海の一部だったことを思い出します。
読了日:10月24日 著者:ジョン バンヴィル
こどものとも 2011年 11月号 [雑誌]こどものとも 2011年 11月号 [雑誌]
『ひともじえほん』ひとり増えるごとに少しずつ複雑な形になって行くのも、楽しい。どんなふうに作るのかな、と唄を読み切るのももどかしくて。最後の表にわあっと歓声をあげたくなるけど本屋さんだったから我慢。立ち読みで済まそうと思ったけど、裏表紙まで!と気がついたら、もう欲しくて。お買い得でした。
読了日:10月23日 著者:
柿の種 (岩波文庫)柿の種 (岩波文庫)
あまりに当たり前で、つい見逃してしまう身近な自然、人々の不思議に、寺田寅彦さんの言葉で、はっとして、ああ、私の周りにこんなにたくさんの感動があったのか、と驚かされます。詩人であり科学者であることが、一人の人間の中で当たり前に同居すると、こんな文章が生まれるのか、と、わたしはただぬくぬくと味わっています。
読了日:10月22日 著者:寺田 寅彦
アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)
巻末の梨木香歩さんの解説を先に読み、「2011年」という年の夏に、「最上のものは過去にあるのではなく、将来にある」との文中の言葉を引用してのメッセージに、心を揺さぶられた。それから本文へ。村岡花子さんはまさにそのように生きた人でした。戦中、重なる空襲の中で『赤毛のアン』を命がけで翻訳し続けたこと、「洗練された平凡」を尊いという言葉、小柄な体からほとばしるような、よりよき善へ顔を向けようとするエネルギーに力を与えられました。
読了日:10月21日 著者:村岡 恵理
戦争で死んだ兵士のこと戦争で死んだ兵士のこと
ものを考えないことの恐ろしさを、先を読まない鈍感さを、当たり前にあると思っているその当り前さがいかに簡単に失われるかを、目の当たりにしました。最初に見た風景と同じ風景に最後にもう一度、出会います。でも、最初にみたときと、最後にみたときとは・・・こんなに印象が違うのでした。兵士は、わたしかもしれないのでした。
読了日:10月17日 著者:小泉 吉宏
絵のない絵本 (岩波文庫)絵のない絵本 (岩波文庫)
屋根裏に住む貧しい絵描き、挨拶をしあう顔見知り一人いないという。悲しい気持ちになることはあっても、心豊かな暮らしだったのでしょう。だから月は毎晩彼に語ってくれたのだ。月の見た「絵」を。ただ一枚の絵の奥や周りに広くて深い世界を思い描かせるような絵を。
読了日:10月16日 著者:アンデルセン
海のはてまで連れてって海のはてまで連れてって
ああ、おもしろい航海でした。読後感の良さに気持ちは晴々。笑いながら、スリルを満喫しながら、小さなメッセージのかけらを拾っていく。一番大切なものはやっぱりお金では買えないものだよ、と。そして、子どもにこっそり見られても恥ずかしくない仕事をしているかな、と振り返ってみる。かっこいい、と言われるのは難しそう。でも自分の仕事を好きだろうか、誠実だろうか、って。
読了日:10月15日 著者:アレックス・シアラー
ぬい針だんなとまち針おくさん (福音館創作童話シリーズ)ぬい針だんなとまち針おくさん (福音館創作童話シリーズ)
まち針であり、ぬい針であることの、短所が災いすれば「しまったあ」と思い、長所を生かして危機を脱すれば、ほっほとうれしいのであった。さすがぬい針とまち針。まいごになった王子様を探しに行くお姫様の話のようであり、魔法にかけられた若者を探しに行く村娘の話のようでもあり、楽しい「ゆきてかえりし」の物語でした。
読了日:10月13日 著者:土橋 悦子
月ノ石 (Modern & Classicシリーズ)月ノ石 (Modern & Classicシリーズ)
悔しいけど、降参の本でした。でも、神話的・寓意的・幻想的(笑)な場面には惹かれるものがあるし、印象的ないくつかの場面があります。禍々しくて、美しい。きっと折々に、切れ切れに思いだすにちがいない。
読了日:10月12日 著者:トンマーゾ ランドルフィ
積みすぎた箱舟 (福音館文庫)積みすぎた箱舟 (福音館文庫)
やっていることは、子どものころのジェリーくんと変わらない。コルフ島がカメルーンにかわって、彼の体が大きくなって財産も大きくなって、彼のコレクションが大きくなっただけ。そして、変わらないことが本当に嬉しいと思うのは彼の感性。味わい深いアフリカの景色やのんびりとした現地の人々との交流や会話の味わい深いこと・・・コルフ島の続きに、この本があることを思い出させる。それにしても彼の相棒の苦労が偲ばれます^^
読了日:10月11日 著者:ジェラルド・ダレル
「絵のある」岩波文庫への招待「絵のある」岩波文庫への招待
挿画入りの岩波文庫、こんなにたくさんあったなんてびっくり。しかも、ジャンルをこんなに広々と網羅して。ロートレックにボナール、ドレ・・・鏑木清方岸田劉生棟方志功・・・寺田寅彦正岡子規の自筆の挿画を飾る随筆集・・・「サロメ」をめぐるオスカー・ワイルドとビアズレーの確執やら、ディケンズサッカレーの微妙な雰囲気・・・挿画は、思いがけない小話をも語ります。楽しい楽しい。出てくる本が端から気になってしかたがありませんでした。
読了日:10月09日 著者:坂崎 重盛
呼んでみただけ呼んでみただけ
時に不吉で不安なものが混ざってくるけれど、「へそまがりの魔女」の「呪い」のような不思議で皮肉(?)な秘め事が、喜ばしくも本当におこることもある。子どものそばで、子どもをとりまく世界の混沌と、混沌から湧き出てくる不思議に驚き、感動する。この子といっしょにいられたこと、この子の世界の深さ広さをすぐそばで見させてもらえたこと、それはこんなに幸せなことだった。
読了日:10月08日 著者:安東 みきえ
ハドリアヌス帝の回想ハドリアヌス帝の回想
死の床から振り返る皇帝の人生の回想。伝記というよりも内面的な物語。内面的な、という言葉さえもはるかに超越しているような物語。長い詩のようでもありました。偉大な皇帝から、一人の人間に戻り、だれもが、私自身も、やがて迎えなくてはならない死の「孤独」に包まれる。生も死も、孤独も受け入れることによって、一人の人の人生は完成するのだ、完結するのだ、と穏やかに。
読了日:10月07日 著者:マルグリット・ユルスナール
逃げるが勝ち (文学のおくりもの 26)逃げるが勝ち (文学のおくりもの 26)
この文脈、覚えがあるぞ。ふふふ。弟ジェラルド・ダレルの『虫とけものと家族たち』で、長兄ラリー(ロレンス・ダレル)が母と丁々発止とやりあうときの、あの話術を彷彿とさせるものがあります。「うるさいぞ雑魚(アンチョビー)め」には噴き出してしまった。ロレンス・ダレル、きっと楽しい人だったに違いない^^
読了日:10月04日 著者:ロレンス・ダレル
パンプキン!  模擬原爆の夏パンプキン!  模擬原爆の夏
パンプキンなどというふざけた呼ばれ方をした模擬爆弾、初めて知ったことだった。わからないから知りたい、から始まったヒロカとたくみの二人だけれど、目指す方向はこんなにもちがう。ちがっていてもいいのだ。違った者同士がいっしょに長崎ちゃんぽんを食べるってことは大切なんじゃないだろうか。ヒロカの「あきらめたらあかん!」に、大きく頷く。
読了日:10月03日 著者:令丈 ヒロ子,宮尾 和孝
神様のボート (新潮文庫)神様のボート (新潮文庫)
葉子の愛した世界を「狂気」と頭から否定したくない。草子というひとりの少女が、ここで育った。世界へ旅立つ準備をここでした。たとえ誰が異常な世界といったとしても、草子にとってはかけがえのない幼年期なのだ。草子のなかにもまた、母と同じ狂気が眠っている。わたしのなかにもきっとある。だけどその狂気をどのように扱うかは、人によって違う。そして、同時に、葉子の一途さに打たれもするのです。
読了日:10月02日 著者:江國 香織

2011年10月の読書メーターまとめ詳細
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