戦争で死んだ兵士のこと

戦争で死んだ兵士のこと

戦争で死んだ兵士のこと



戦争は殺すことであり死ぬことなのだ、と最初に思う。
それがページを繰るに従って、苦しくて辛くて仕方がなくなってくる。
ページごとに、幸福は増えていく。そのぶんだけ辛くなっていく。
若ければ若いほどに大きな夢があって、世界がきらきらと輝いてみえる。
そして、ずうっとずうっとこの続きの日々があるのだと信じる。


これは反戦の物語だろうか。そう思って手に取った絵本でしたが・・・
いや、後悔の物語のように思う。
ものを考えないことの恐ろしさを、先を読めない鈍感さを、
ぼんやりしていたら当たり前にあると思っているその当り前さがいかに簡単に失われるかを、
目の当たりにしました。
この絵本を読んで、苦しい、辛い、と思ったのは、自分にも思い当たる部分が多くあるからでした。


自分の足元の地面を崩してしまうきっかけは、人生のあちらこちらに口をあけているのかもしれない。
その口のなかに、いとも簡単に、何の気もなく踏み込んでしまう。
こんなはずじゃなかった(いや、最初からこんなはずだったのだ)と、気がつくのは大抵手遅れになってからです。


たとえば、ぽーんと投げたものが落ちてきたとき自分にあたったこと。
たとえば、ほんのちょっと目的地に早く着きたいと踏み込んだアクセルが交通事故を招いたこと。
たとえば、「それは間違っている」と声をあげつづけることをあきらめた続きにある明日。
・・・そんなことを思い浮かべていました。


最初に、死んだ兵士のいる風景に出会います。
最後にもう一度、同じ風景を見ます。
でも、最初にみたときと、最後にみたときとは・・・こんなに印象が違うのでした。
兵士は、よく知っているだれか、もしかしたら、わたしかもしれないのでした。