海のはてまで連れてって

海のはてまで連れてって

海のはてまで連れてって


「ぼく」とクライブは双子です。
「ぼくら」の父さんは船乗り。豪華客船モナリザ号のシニア・スチュワードなのだ。
父さんが船に乗るとき、母さんのいないぼくらはおばあちゃんの家に預けられる。
でも・・・結局それがおもしろくなかったのです。さびしかったのです。
いつか父さんといっしょに船に乗りたい、というのが二人の夢でもあったのです。
それで・・・
それで・・・夢をかなえちゃった?
・・・密航しちゃったのです。二人だけで・・・


楽しかった。
まず主人公二人が双子である、というのが素敵。(双子、というのは、小さいときから憧れの兄弟形態でした)
そして、密航・・・その手順にどきどき。
子どもである、という長所(!)を利用しての船での暮らし。
見るもの聞くもの(いや、全部読むものですね)にわくわくどきどき。
ああ、素敵な船の暮らし。いつ密航がばれないか(特に父さんに)というスリル付き。
・・・だけでも充分楽しいのですが、つぎつぎに起こる事件は、陸の上より、海の上のほうが数段おもしろい。
小さな事件、大きな事件、えらいこっちゃ、と最後のほうは一気読み・・・痛快!でした。


兄弟の会話がおかしくて、おかしくて・・・つい噴き出してしまうのですが、
笑いながらも、折々に、小さなメッセージを拾っていく。
あなたの一番大切なものはなんだろう、誇れるものはなんだろう。
お金では絶対に買えないものだよ! と。
お金で買えないものはたくさんある。
こんなにたくさんある。
お金のほうに目をむけていたら、得ることはおろか、あることさえも知ることのできないものばかり。
ベタといえばベタかもしれないけれど、こうも爽やかに謳いあげられると、こんなに気持ちがいい、清々しい。


そして、大すきな父さんが、愛する子どもたちに後ろ髪を引かれながらも、なぜ船に乗らないではいられないのか、
これが最後、といいながら、なぜ海に出ないではいられないのか・・・
双子たちはわかる。
・・・かっこいいんだ。
私たち大人、子どもにこっそり見られているかもしれないとしても慌てずにすむような仕事をしているだろうか。
子どもたちに恥ずかしくない仕事をしているだろうか。
自分の仕事を好きだろうか、責任を持っているだろうか、誠実だろうか。


読後感の良さに気持ちは晴々。
彼らの旺盛なエネルギーにも、元気がでました。ああ、おもしろい航海でした。