8月の読書

8月の読書メーター
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:3827ページ
ナイス数:198ナイス

マビヨン通りの店マビヨン通りの店
作者の人生のうちにすれ違った人のことが書かれています。名や功に惑わず、自分らしい人生を歩みぬいた人たち。ぽつりぽつりと語られる一言一言は、ユーモアがあるのに静かで、美しいのにどこか不器用そうで、音楽的なのにちっとも華やかではなくて「名文でない、いい文章」という言葉がなんて似合うのかと思う。表題作の中で語られていた椎名其二のモットー「成功を避けよ」はもしかしたら、作者自身の矜持だったかなあ。
読了日:08月30日 著者:山田 稔
マミーマミー
テレビもなかなか買えない、カーペットもなかなか買えない、子どもへのクリスマスプレゼントのための資金をどこから調達しようか、と悩んでも、なんだか大金持ちみたいに幸せそうじゃないの、アグネス。
読了日:08月29日 著者:ブレンダン オキャロル
わが子からはじまる 食べものと放射能のはなし (クレヨンハウス・ブックレット)わが子からはじまる 食べものと放射能のはなし (クレヨンハウス・ブックレット)
クレヨンハウス・ブックレット二冊目。放射能汚染の補償を「買って食べて支える」などと言う感傷的な言葉で、生産者と消費者が責任を負担し合うことはやっぱり間違っている。双方ともの深い苦しみは農村に住んでいれば肌で感じることです。「避けられる被爆は避ける」という点で、生産者・消費者が協力、支え合う方法はないだろうか、と考えます。
読了日:08月28日 著者:安田節子
わが子からはじまる 原子力と原発きほんのき (クレヨンハウス・ブックレット)わが子からはじまる 原子力と原発きほんのき (クレヨンハウス・ブックレット)
クレヨンハウス・ブックレットの一冊目。「原発は止めるべき。それに向けてどう動いていくか」という言葉から始まる明解で頼もしい本。ごくごく薄い本だけれど、未来の子どもたちのために残さなければならないものと残してはいけないものをはっきりと意識する。落合恵子さんの創刊にあたっての言葉もよかったです。わが子から始まって血縁を越えて・・・
読了日:08月28日 著者:上田昌文
よぞらをみあげてよぞらをみあげて
視界が広がるにつれて、わたしも景色の一部になっていくよう。少しにじんだやさしい水彩もいいな。ここに自分がにじんでいくのはこんなにも気持ちがいい。少女の世界を壊さないようにそっと寄り添うおかあさんもいい。わたしは女の子なのかな、おかあさんなのかな。どちらも気持ちがいい。満ち足りて静かに夜は更けていく。
読了日:08月27日 著者:ジョナサン ビーン
Coots In The North & Other Stories (Red Fox Older Fiction)Coots In The North & Other Stories (Red Fox Older Fiction)
未完の「オオバンクラブ北へ」ランサムは各章各場面を数行ずつばらばらに書き足しながら物語を書いていたようです。これはほんとにメモ書き程度。それでもシリーズ未読の作品がほんの少しでも読めればいいなと思ったのですが、あまりに魅力的な設定なだけに、欲求不満になってしまった。「死と栄光」号の三人が、水路、湖水地方にD姉弟を訪ねていく話。この三人とツバメ号とアマゾン号の子どもたちが接触することなど考えていなかっただけに、わくわく。旅路の冒険、出会いの場面など、ちゃんと知りたかった。もう読めないんだね。
読了日:08月26日 著者:Arthur Ransome
盆まねき盆まねき
その期間だけは時間がとまって感じる日本のお盆。わくわくした子どもだった私も今は忙しいほうの大人になった。いまに、なっちゃんにお話を聞かせるお年寄りたちのような、少しだけ暇のあるおばあちゃんになれるかなれないか(笑) 記憶がなくても、わたしのなかに流れる血は、遠いあの日につながっています。そして、そのずっとあとの(書かれていない)あの日にも。忘れないこと。今、必死で生きて、必ず子どもたちに伝えていこう。つながっている森羅万象の不思議のなかでこつこつと生きていくことも。
読了日:08月25日 著者:富安 陽子
鳥とけものと親類たち (集英社文庫)鳥とけものと親類たち (集英社文庫)
人生が与えてくれた五年間の輝かしい休暇。後の暗い日々に取り出して温まることのできる光のようです。自分の大切な日(もちろんこんなに豪華じゃないけど)のことなどもあわせて思いだし、懐かしくて、少し切なくて、豊かで幸せな読書の時間だった。
読了日:08月24日 著者:ダレル,池澤 夏樹
マイ・アントニーア (文学シリーズ lettres)マイ・アントニーア (文学シリーズ lettres)
物語のなかにたびたび現れるおおらかで美しい自然描写の数々、アントニーアの内面の輝きに照らされて、豊かな気持ちになった。幸福の意味を考えてしまいます。
読了日:08月21日 著者:ウィラ・キャザー
千年の森をこえて千年の森をこえて
深い森に吸い込まれるような静かな文章で、詩を読んでいるようでもあった。湿った森の空気を皮膚に感じ、川と木々の匂いもしてくる。子は親から離れて自立する。自立しつつ、親を救いたい、と思いが大きな奇跡のようだった。ひとつの奇跡は、さらなる奇跡を呼び寄せるのかもしれない。
読了日:08月20日 著者:キャシー・アッペルト
僕は、そして僕たちはどう生きるか僕は、そして僕たちはどう生きるか
普通、みんな、という言葉のふわんとした心地よさ。だけど本当はなんとあやふやで危なっかしいのだろう。作者は「考えろ」と呼びかける。突き放しつつ、まるごと受け入れる「考えろ」でした。若者に向かう真摯な言葉の一言一言に打たれました。作者のぴんとした姿勢、人としての誠実さに、ただただ頭がさがるばかりです。
読了日:08月16日 著者:梨木 香歩
君たちはどう生きるか (岩波文庫)君たちはどう生きるか (岩波文庫)
この本が出てから約65年。そして、今、わたしは大人。大人として、「わたしはどう生きるか」をこれまで以上に真剣に考えていかなければならない時なのだと思っています。
読了日:08月12日 著者:吉野 源三郎
ほうかご探偵隊 (ミステリーランド)ほうかご探偵隊 (ミステリーランド)
のどかでかわいい探偵たちだな〜と、のんびりと読んでいましたが、いい調子で作者の手の上でころがされました。爽やかで楽しい読後感は、龍之介くんの叔父さんの言葉のおかげ。「世の中は面白いことでいっぱい満たされている」って。これから先、どんな面白い本に出会えるだろう、とわくわくした気持ちで読み終えることもできました。ありがとう。
読了日:08月07日 著者:倉知 淳
きみに出会うとききみに出会うとき
主人公をはじめとする12歳の子どもたちが閉そく感を越えて成長していく姿を見守ることが嬉しかった。そして、その成長物語を懐かしくも味わい深いものとしてみせてくれるのが、SFという「ベール」なのだ、と思います。ラストは意外であるけれど、びっくりした、というよりもただただせつなくて、温かくて。最後に出て来た鉛筆画の肖像は、だれが描いたのだろうか。もしかしたら、と思っています。
読了日:08月05日 著者:レベッカ・ステッド
カイウスはばかだ (岩波少年文庫)カイウスはばかだ (岩波少年文庫)
ポンペイから、「カイウスはばかだ」と子どもの手でらくがきされた神殿の壁が出土したことから、作家はインスピレーションを得てこの物語を書いたそうです。トーガを着ていようが半ズボンをはいていようが、子どもは子ども、何にも変わらないのかもしれない。ドイツの本ですもの、この本の主役七人の少年たちは、もしかしたらケストナーの少年探偵たちのご先祖様かもしれないです。
読了日:08月03日 著者:ヘンリー・ウィンターフェルト
七人の敵がいる七人の敵がいる
解決策などあるはずのない世界で爽やかな風が吹きはじめるのはわけがありました。「外に出れば七人の敵がいる」という言葉に、「されど」で続く言葉があったなんて初めて知った。
読了日:08月01日 著者:加納 朋子

読書メーター