- 作者: 倉知淳
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/11/25
- メディア: 単行本
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五年三組の教室で、次々に物がなくなった。
それは、どれも不要品。なくなっても誰も困らないものばかりなんだけど、
一定の時間をおいて四件続くとさすがに、何か不思議な気がしてくる。
僕は、親友で探偵小説好きの龍之介くんに誘われて、この「不要物連続喪失事件」解決に乗り出すことになった。
そこに、学級委員の吉野明里、飼育委員の成見沢めぐみが加わり、探偵隊が活動を始めます。
富士山のふもとののどかな学校。
のんびりとしたクラス、おおらかでおおざっぱな担任の先生や、お散歩大好きな保健室の先生。
なんとものどかなミステリである。
だれが、なんのために、なぜ・・・確かに謎なのだけれど、
なくなったからといって誰が困るわけでもない紛失物の謎を追う、というわけだもの、緊張感があるわけでもなく、
だから、探偵ごっこっぽい子どもたちのわくわくした気持ちが微笑ましくて、
それぞれの子どもたちの個性がかわいくて、
放課後の秘密めいた集まりが楽しかった。
・・・というつもりで読んでいたのですが・・・
子どもたちが学校のなかで解決するミステリではあるけれど、これはれっきとしたミステリでした。
わくわくしてばかりいないで、張られた伏線にしっかりと目をこらしていなければいけなかったのでした。
あなどってはいけない。
いい調子で、作者の手の中で、あっちにこっちに転がされた読者でした。
そのうえで、なんとも爽やかで楽しい読後感に、うふふ、と微笑んでしまうのは、龍之介くんの叔父さんの言葉があるからかも。
「世の中は面白いことでいっぱい満たされている」って。
そして、さらに「僕」の言葉があるから。
「本屋さんには、タイトルを見ただけで嬉しくなっちゃうような本がいっぱいあるんだよ。(中略)
・・・わくわくするような面白い本。
そういうお話がある限り、楽しい謎解きは終わらない。」
だから、わたしも、楽しみに暮らしていこう。
これから生きているあいだに、何冊、「これは!」と思えるような面白い本に出会えるかな、と楽しみにしながら。