ふくろう女の美容室

ふくろう女の美容室 (新潮クレスト・ブックス)

ふくろう女の美容室 (新潮クレスト・ブックス)


・・・ああ、なんだかわかる。
錘のような塊をだれも、ひとつふたたつ、みっつ、と大小にかかわらず、抱え込んでいるにちがいない。
この先もずっと抱えて生きていくしかない。
あえてそれを語るならば、どうか体裁のよいハッピーエンドはやめて。教訓話もやめて。
ただ、そのままに・・・
そのままの物語がそのままに語られるのを好ましく思う時もあるのです。
ドラマチックな物語よりも。


事態は明るくはない。この先の道を思えば細くなるばかりだろう。
奇跡は起こらない、たいていは。望みもしない。


そういうことが訥々と語られていく。
訥々と? 違う。ちょっと突き放したようなユーモアに乗せて。(見方を変えれば、笑えるのだ。こんな事態も)
そういえば、まわりのこの静まりも、この風景も、なんて甘美なのだろう。
仕方がない。錘は決して軽くならないのだ。だったら、重さをはかっても仕方がないのだ。


屈託なく幸福そうに見える人が、人知れず大きな悩みを抱えて苦しんでいることもあるように、
逆に、誰が見ても孤独で不幸にしか見えない人が、(たぶん実際苦しいだろうけど)
思いがけず訪れた芳醇な一瞬を、一粒一粒、首飾りのようにつなぎとめていることもあるのかもしれない。
せつないけど・・・。