夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女


とても好き!なのだけれど、どこが?どういうふうに?と聞かれると、答えに窮してしまいます。
うーーーん。どうしてこんなにいいんだろう。


四つの連作短編なのですが、大した盛り上がりがあるわけでもないし、ストーリーそのものに大した魅力があるわけでもない(と思います)
それなのに、「この本宝物!」と思ってしまうのは・・・
まず雰囲気。いや、人物。いや微妙に関連しつつ繋がっていくキイワード・・・ああ、もう全部。
これは読書というより、体験であり、最高の遊び、と感じています。


不可思議で魅力ある登場人物たち、主人公二人はもちろん、どの人もどの人も大好きだ。
なのに、まるで存在感がないのだ。
こんなに個性的(?)なのに、こんなに生き生きしているのに、実際いるわけないよねー、としみじみ思ってしまう彼ら。
で、いるわけない、と開き直れば開き直るほどに、ますます好きになるし、たまらなく愛おしくなってしまう。
みなさん、素敵です。
そして、この町かども、大学も、まるで知らない場所、存在感あやしすぎるのですが、
不思議にノスタルジックな感じ、ああ懐かしい、という感覚が奇妙に胸の奥からせりあがってきます。


なんで緋鯉かな〜。なんで林檎かな〜。なんで達磨かな〜。
わからないけど、わからないまま、こいつらも愛おしい。


お酒におぼれる夜の町も、古本市のごちゃごちゃも、学祭の盛り上がりも、流行り風邪の熱っぽさも、
どこか似通った怪しさがある、といえばある。
正気を失った者勝ちの怪しさ、ともいえるかもしれない。
気が大きくなって「矢でも鉄砲でも持ってこーい」と言いたくなるところを
そこはかわいく、一歩下がって、少しだけ醒めた声で「なむなむ」という声・・・
なんだろうねえ、この雰囲気。
人も場所も言葉も小道具も・・・何もかもひっくるめた、この本の雰囲気がたまらない。
そして、きっと、これから時々、この場所の怪しい雰囲気に浸りに行きたくなってしまうだろう。
この怪しい人たちの間にいさせてもらいたくなってしまうでしょう。


わたしも入れてね。そのおコタに。これから暑くなるけど。
なむなむ。