- 作者: 森見登美彦,くまおり 純
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/05/29
- メディア: 単行本
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★
小学四年生のアオヤマくんが、大人びているというか、達観(?)しているというか、ませてるというか、
そう思っていると、はっとするほどピュアだったりする。
この子、ほんとにかわいい。
そして、彼の友だちがまた素敵なのだ。
敵役のスズキくんも素敵なのだ。
不思議な話である。
普通の町、発展途上の新興住宅地である。
この町にある日突然たくさんのペンギンが現れるところから始まる。
何か不思議なことが起こっているのに、なんとものんびりした町です。
そして、不思議なことが起こっているというのに、なぜかゆったりとくつろいでしまっている私です。
ほんと不思議な話よ。
そうか、SFなのか、ジャンルとしては。いや、ファンタジーかしら。
でも、そう言い切ってしまいたくない独特の空気。
爽やかなんだよね、そして、鼻の奥がつんとするようなせつない雰囲気なんだよね。
季節は夏である。
夏に子どもは成長するのである。いささかの成長痛を伴って。
それだけのことにたまらない気持になってしまう。あまりにまぶしく甘やかでホロ苦く・・・少し悲しい。
だって、自分も間違いなく通り過ぎてきた季節である。
それからもうひとつは、この物語の世界観。
言葉にしてしまえば、ああ、そういうことかもしれないなあ、心地よいなあと思う世界観に、
子どもたちがひたすらな日々を過ごすうちに、気づいていく、近づいていく。その一歩一歩が好きなんだ。
その一歩一歩のなかに、大切な初恋があり、家族との関係もある。
わたしはアオヤマくんとお父さんの関係が大好きです。お父さんの息子への思いが好き。
「ぼくらは遠くに来たねえ」
「すごく遠くに来た感じがするね」
胸がきゅんとなる言葉ではないか。
・・・そうだね。でも、きっときみたちはもっともっと遠くへ遠くへ行くんんだね。遠くへ行って行って・・・
「本当の本当に遠くまでいくと・・・」とお姉さんが言ったように、
そしたら、・・・
もしかしたら、遠くへ行くこと、旅することの目的はそういうことを確認することなのかもしれない。
わたし気がついていないけれど、ほんとは体の深いところでそれを知っているのかもしれない。
だから旅をしたい、遠くへ行きたいと思うのかもしれない。
生きる、という旅もそういうことなのかもしれない。それはウチダくんのうまく言葉にできない研究にも繋がって。
それは本能みたいなものだろうか、何かすごく深い原則みたいなものだろうか。
こんなことをつらつら考えているのも妙に心地いい。
ああ、遠く海が見える(気分^^)