天翔る少女

天翔る少女【新訳版】 (創元SF文庫)

天翔る少女【新訳版】 (創元SF文庫)


大伯父トムと弟のクラークといっしょに宇宙旅行に出た火星年齢8歳(実年齢では15歳)の少女ポディの日記です。
楽しい旅行のはずだったのに思わぬ事件に巻き込まれて大変なことになってしまう物語。


この本の巻末の解説は坂木司さん。これがおもしろかったのです。
この物語の結末には、別バージョンがあったそうで、その要約までおまけに紹介されていて、得した気分でした。
どちらのバージョンが好きか、と言われれば、わたしは、今のままでよい派です。(だって、最後くらいねえ・・・)


解説の言葉どおり「将来の見通しは甘くて、楽しく生きたくて、でもって自意識過剰」のポディ。
さらに、坂木司さんは「確かにポディはイタいですよ」とまで言われます。
えー、だって、だって・・・と思っていると、「それこそティーンエイジャーというものだから」とも言われる。
そうですよね、そうですよね、とわたしはほっとします。
イタかろうがなんだろうが、この子、ほんとにかわいいです。
彼女のふわふわした語りにいらっとするし、確かに甘いし、足りないし、
だけど甘いなりに前向きだし、一生懸命でひたむきで・・・憎めないのです。


姉と弟の性格や才能の違いも楽しかったです。
互いを見る目の厳しい思いこみ(?)は、ともに自信過剰だから? もしかしたら、二人、似ている?(よく紙一重とか・・・)
どちらにしても、足りない人間の物語のほうが、できた人間の物語よりおもしろいにきまっている。
一生足りないわけではないかもしれないし、まして、若者には手遅れなんて言葉は使いたくない。
誰が何と言っても、この先に果てしない未来があってほしいのです。


印象に残るのはトム大おじの「お話」
トム大おじは、ポディを、小さなときから膝に乗せてお話を聞かせてくれたといいます。
「昔々、世界がまだ若かったころに」で始まる「ポディの話」です。
今、大きくなったポディは、大おじに言います。「・・・・わたしは、もう子どもじゃないのよね。それに、世界も若くはないわ」
すると大おじは、この物語が「奇跡」でおわることを教えてくれるのです。
「ポディは大きくなり、もうひとりのポディをつくりました。すると世界はまた若くなりました」
ずっとずっと何度でも世界が「また」若くなりますように・・・