ほっとする空海の言葉

ほっとする空海の言葉

ほっとする空海の言葉


美しい本でした。見開きの半分には、空海の言葉を描いた(?)「書」になっています。
「描いた」という言葉を使ったのは、読むよりも(読めないしね^^)見ることを楽しんだからです。
書道はまったくわからないのですが、それでも美しい、と思いました。

>そんな人生の全てに「大いなる楽しみ」(大楽)を見つけようとするのが、弘法大師空海が伝えた密教です。
(中略)
それは、苦楽のいずれにもとらわれない、本当の意味で安らかな、そして豊かな境涯のことです。
と、著者は「はじめに」で語ります。
大楽。
この本では、空海が遺した言葉の中から七十の言葉(短い言葉)を拾い上げ、そこに解説を添えています。
解説なしで、空海の言葉だけを最初に拾って読んでみれば、(それでは、まったく意味がわからないのですが^^)
とてもおおらかな気持ちになりました。


「南峯(なんぽう)に独り立って幾千年ぞ」という言葉の豪快なイメージが好きです。
解説の「地には・・・天には・・・」という言葉に自分を取り巻く空気(宇宙)が遠く広がっていくような、
そして、自分のなかにも同じ宇宙が深く広がっていくような爽快感を味わいました。


「毒薬乍(たちま)ちに薬となる」
これは、「迷いのただ中に悟りを見る密教こそは、まさに“心の錬金術”」ということなのだそうです。
迷いばかり、おろおろしてばかりのわたしですが、迷う日々も無駄じゃないよ、と言われたようで、ほっとします。


著者の解説はやさしい言葉です。
わたしたちを取り巻くさまざまな出来事を通じて、空海の言葉の意味と、わたしたちの生き方のヒントを語ります。
やさしく語っていますが、その意味は・・・実は難しくて、本当にわかったとは言えません。
深遠な密教の言葉(?)をわずか1ページ弱のページの中で語るのは不可能にちがいないし、もしかしたら語るべきものではないのかもしれません。
たぶん、この本をヒントに、自分を振り返ってご覧、という示唆なのだろう、と受け取っています。
わからなくてもきっといいんだと思います。
ただ、気になる言葉がちょっと心の片隅にでも残っていたら、もしかしたら、ある時ふいに心の表面に浮かび上がってこないとも限らない、
そんなふうに考えながら読みました。