戦争と平和(六)

戦争と平和〈6〉 (岩波文庫)

戦争と平和〈6〉 (岩波文庫)


だらだらと読み続けていましたが、やっと読み切りました。4か月かかりました。
戦争ってなんだったのでしょうか。私には最後までわかりませんでした。
トルストイは、ロシアとフランスの戦争について、多くのページを費やして語っています。
印象に残るのは、戦争の行方は一人の英雄によるものではなく、作法や正義でもなく、時代と民衆の勢いによる、とそういうことだった。
それにしてもエピローグの第二篇は、わたしには辛かった。理解した、とは到底言えません。


長引く戦争のなかで、多くの人々の姿が立ち上がってきた。
群像ではなくて、やっぱりひとりひとり・・・どの人も、生身の人間で、それぞれに成長したり変わらなかったり・・・。
途中で消えてしまった人も。
消息不明だったり亡くなったり・・・
それぞれに夢を持ち、悩み苦しみ、力を尽くして生きようとしていた若者たちの姿が次々に蘇ってくる。


ピエール。一番いらいらさせられる人でした。良い人なだけに何をやっても道化にしか見えなくて。それなのに、彼が到達した高みに驚く。
終わってみれば、自分の人生に誠実に向き合った人だった。
アンドレイ。ピエールと正反対に見えるのに、なぜこの二人が親友でいられるのかわからなかったけど、二人とも同じものを追っていたのだった。
(好きになった女性もいっしょだったし。)同じものを追っていたのに、それをどう感じるか、どう生きるかはこんなにも違うんだ。
ペーチャのことは。ああ・・・。
ソーニャ。そういう人生もありかもしれないけれど、きっとあるんだろうと思うだけに、なんともやりきれない人生だと思う。
ナターシャがソーニャについて語った言葉には、はっとさせられる。卓見、と思う。残酷でもあるけれど、慰めにもなっている。
ナターシャの結婚後の変わりようはびっくり。いや、これも普通にあることかも。別の輝きが備わったわけでもあり、これはこれでよし、でしょうか。
ナターシャとピエール・・・意外でした。
ニコライとマリアも意外でした。
人のめぐりあわせって不思議なものですね。


彼らの人生の冒険は一応の決着がついた、ということだろうか。
冒険の目的が、自分のためではなくて、他者を守り育てることに変わったということかもしれない。
けれども、物語の最後に、アンドレイとリーサの息子ニコーレンカが自分の道を歩きはじめようとしています。
たぶん亡き両親やマリアたちと、よく似ているようで全く違う人生の夢と憧れを抱いて。
そうして、ずっと続いていくにちがいない。「戦争と平和」に終わりはありません。