第二音楽室

第二音楽室―School and Music

第二音楽室―School and Music


shool annd Musicという副題がついています。
中編短編が四つ。
どの物語も、
時代も違う、学年(小学校〜高校)も違う、主人公たちの音楽との関わり方も違う。
共通しているのは、だれもが音楽が大好きだ、ということ。
学校の音楽は、一人で奏でるのではなくて、みんなの音が集まって生まれる合奏(合唱)なのだ、と
思えば当たり前なことなんだけど、改めて納得して、感動しました。


彼らの音楽の物語を読んでいると、学校って、音楽みたいだなあ、と思えてきます。
それぞれがそれぞれの音を出している。
みんなの音を大切に聴き合い、響かせ合って、合奏になる。


この短編集が素敵なのは、どの物語も、最後が合奏で終わるところ。
まだまだ未熟で改善の余地があったり、次のステップにつなげるための合奏であったり、
変わりつつある何かを確認する(?)合奏であったり、さまざま。
でも、どれもみんな合奏なんですよね。
一曲に心こめて、互いの音を重ね合わせる。
その一曲のために費やしたたくさんの時間、乗り越えてきたいろいろがあって、たくさんの音がある。
みんなで奏でる音楽って、なんだかいいなあと思えてきます。
音楽でなくてもいいんだ、と思う。でも、やっぱり音楽だからできることってあるんだなあ。


四つの物語、どれも大好き。
「第二音楽室」「デュエット」「FOUR」「裸樹」、物語は四つに分かれているけれど、
四つのなかには、さらにたくさんの子どもたちがいて、たくさんの歌があって、
そのどれもが、いとしくていとしくて。一音一音そのまま大切。


だけど、一番印象的なのは「裸樹」でした。
「裸樹」の主人公の語りは一言一言が突き刺さるようでどきどきした。
彼女のような体験をしたわけではないけれど、彼女が感じていることはわかる、
確かにそういうことってあるんだ、と思う。
女の付き合いって、時に面倒くさい。
だけど、一人でいられるほど強くもない。
自分の臆病さを嫌悪しながら、波風たてないようにぎりぎりで繋がっている世界が、確かにわたしにもあった。
(だけど同時に、思い出すだけで温かい思いでいっぱいになる顔・顔・顔も知っている)
最低なあの子よりなお最低な自分に気がついて、どうすることもできないでいる主人公の独白は苦しいくらいに正直だった。

彼女はこれからどうするだろう。
爽やかにふっ切る道に至るのだろうか。
弱さを認めたところで克服する方向をみつけるだろうか。
まわりが変わるだろうか。
ドキドキしながら読めば、次の言葉に行きあたる。

>・・・『らじゅ』の歌に変な正義はない。説教もない。ただ、彼女が何かと闘っている、闘いつつ、守りつつ、怯えつつ、傷つけたり、傷ついたり、そんな言葉と声と音から、ちらりと透けるように一瞬の光が差す。美しい――と思う。

「美しい」という言葉に、はっとする。
強いとか弱いとかじゃなくて、いかに生きるべきかじゃなくて、正しいとか間違っているじゃなくて、
「美しい人になりたい・・・」
忘れられない場面になりました。