ボグ・チャイルド

ボグ・チャイルド

ボグ・チャイルド


北アイルランド紛争のさなか、北アイルランドの国境の町に住む青年ファーガスの高校生としての最後の夏の物語です。
将来への希望と不安、恋、友達とジョークをとばしあうこと・・・どこにでもいそうな高校生のエピソードです。
だけど、この国・この年代の情勢は、錘のようにファーガスを引きずります。
彼の兄ジョー政治犯として刑務所に収監されていますが、獄中ハンガーストライキに入ります。


着実に死にむかって歩んでいく兄の時間をカウントダウンしながら、自分の非力さや焦燥感と戦います。
兄のことをだれにも話せないでいるファーガスの背負った重たい現実に寄り添いながら読んでいけば、読んでいるその最中にさえ、
恋人や友人たちの軽さがまるで別世界の出来事のように感じられ、現実から離れていくような感覚に陥りました。
でも、ほんとうは彼らも背負っている別の重たいものがある。それをしばし心の片隅に押しやって一緒に笑っていた。笑いあえる仲間がいることの幸福。


湿地でファーガスが発見した鉄器時代の少女(?)メル。
メルの死にいたるまでの日々が、恋をするファーガス自身と獄中で死につつある兄とにだぶります。
二つの時代がファーガスの中で響き合うような不思議な感覚。


「何世代にもわたって受けつがれる変わりばえもしない悪意」という言葉に気が滅入りそうになります。
メルの生きた鉄器時代
ファーガスのいた1981年。
そして、わたしが今いる2011年。
・・・だけど、考えてみる。悪意もあるけど善意もあるんだよ。果てしなく広がる大いなる勇気もあるじゃないか。
「何世代にもわたって受けつがれる変わることのない善意」という言葉に置き換えてみる。これも事実ですよね。


ファーガスは日課のランニングをしながら、母さんも父さんもこの紛争が始まったとき、なぜ南側に移住しなかったんだろう、と考えます。
そんなファーガスの目の前に広がるのは素晴らしい彼の故郷の風景でした。
ファーガスは両手を伸ばします。「このためなんだ。これらすべてのため。ここがふるさとなんだから」
とても印象的な場面でした。



2011.3.10読了。
書きかけの感想。翌日、この続きを書く気持ちになれなかった。