文芸時評「本にできること」 斎藤美奈子 (朝日新聞3月29日 朝刊) |
東北・関東を大地震・大津波・原発事故が襲って半月。
この記事には、本にできることが力強く(でも決して押しつけがましくなく)書かれていました。
非常時には旧著に学ぶ点が多い、と言い、とりあげた数冊のうち、
田辺聖子さんの『欲しがりません勝つまでは』から引用された次の言葉は印象的でした。
〈あの過酷な戦争を生きのびるのに、私は、詩や小説や絵や、美しいコトバなどが手もとになければ、ひからびてゆく気がしていた」
非常時に、本など入り込む余地はないかもしれない。
でも、本だからできることもあるにちがいないです。
本はそれをとても謙虚にもくもくとこなしているのだろう。誰が振り向いても振り向かなくても。
斎藤美奈子さんの次の言葉、引用します。
私は文学を、読書を過大評価はしていない。ただ、文学にしかできない仕事があるのは事実だし、読書でしか得られない効用があることも知っている。
あなたが過去に元気づけられた本、慰められた本を思い出そう。その情熱をツイッターやブログ、メールで流そう。
さらに、被災地への本の持ち込み、避難所が学校ならば図書館の開放、子どもや高齢者への読みきかせを奨励します。
この記事が素敵なのは、本なんか邪魔なだけだと思うならやめておけばいい、支援の仕方は多様でよい、と結ばれていることです。
シュプレヒコールのように揃って鳴らすスローガンは本には似合わない。
読書は趣味、ひまつぶしにすぎない。
だけど「最高の」ひまつぶしですよね。
「最高の」ひまつぶしは、こんな時であっても(こんな時だからこそ)思いもよらない光を放つかもしれない、とそんなふうに思ったのでした。