ダブル・ジョーカー

ダブル・ジョーカー

ダブル・ジョーカー


ジョーカー・ゲーム』の続編、これも短編五つ。
前作もおもしろかったけれど、こちらも負けず劣らずのおもしろさでした。
短編集ですが、一作ごとに着々と時代は流れ、日本は中国に侵攻、泥沼、長期化。
昭和十年代の日本・欧州の情勢を、裏(?)から光を当てて見せてくれるので、勉強になります^^
そして、最後は真珠湾攻撃まで進み・・・
ああ、ここまで来てしまったということは、この先続編はないのだ、と惜しみつつ読み終えました。


表題作『ダブル・ジョーカー』は、D機関の対抗馬「風機関」が現れますが、あまりにお粗末で、D機関と結城中佐の無敵ぶりをアピールしただけだった。
「死ぬな殺すな」と「死ね殺せ」とのどちらが強いか。
「死ぬな殺すな」の意味を既成の価値観でしか理解しようとしない段階でもう勝負はついていますって。
とはいえ、権威に奢った者のプライドが叩きのめされる様を眺めるのはすかっとするものです。
楽しかった。


『柩』は、「死ぬな殺すな」がモットーのスパイがいきなり死体で登場。死んでもやっぱりスパイであるってすごい。
若き日の結城中佐の凄みなども知ることができたし、
思いがけず見つけた部下への思いやりはあまりにさりげなくて、さりげないからこそ、沁みるのです。
しかも、彼は、「とらわれない」ことを厳しく信条とした組織のトップであるから。


最後の『ブラックバード』ですが・・・
〜ネタばれします。以下、白字で書きますので反転お願いします。マウスをクリックしながらスライドすることで読めます〜

前作の『ロビンソン』をちらっと思い出しつつ・・・今回のこの失敗も、ほんとは、結城中佐がしくんだんですよね?
わざと仲根を「とらわれている」状態にしたのですよね? 「情報担当官同士の現地での接触」を命じたのは、そういうことですよね?
戦争になれば日本は負ける。負けさせなければならない、ということだろうか。
そこにひっぱっていくために、結城中佐はD機関を設立したのだろうか。滅びることを前提に。
でも、やっぱり寂しい。
こんなふうに終わってしまうことが。
沈黙。結城中佐不在。


追記
これでおしまい、のつもりでいたのですが、もしかしたら、つづきもあり、かな?と思えてきました。
もし、あるとしたら?
どんな展開になるのでしょう。
どんな方向にむかって彼らは進んでいくのでしょう。
続き、読みたいなあ。