うちゅうの目

うちゅうの目うちゅうの目(まど・みちお詩集)
まど・みちお
FOIL


四人の写真家の美しい写真と並んだまどさんの詩。
この小さな詩集に付箋は不要でした。
気になるフレーズに貼っていったら、たぶん全部のページに貼らなければならなくなってしまう。


わたしの目は、耳は、感性は、ちゃんと開いているのか。
見えているつもりなのに見えていなかったもの、聞いているつもりなのに聞こえていなかったもの。
澄み切った言葉が見とおす物事のありのままの姿は、
たとえば、アリの命と同じ大きさの自分の命が、こんなにばかでかい入れ物に入っていることに、
気がつくことかもしれないですね。


どの詩もどの言葉も大切で、ちゃんと目を開いて、耳をすまして、何より心をこめて生きていたら、
今まで見過ごしていたもの、ありふれたものだと思って振り返りもしなかったものたちの本当の姿に気がついただろうに。
なんていい加減に暮らしてきたのか、と、恥ずかしい気持ちでもあるのです・・


ぞうさんの鼻がかあさんと同じように長いことも、母さんが好きということも、思えばなんて素敵な不思議。
そして、その隣のページでは、
ノミが大威張りで歌うのだ。
ノミがノミであることのすばらしさを。
ゾウでないことの素晴らしさを。
それがとっても嬉しい。わたしだってゾウではないのを誇れる生き方をしたいじゃないか。


「ことり」を歌った詩・・・
この壊れそうなものを息をつめるようにして、そーっとそーっと空気が包むように歌う詩の、なんと繊細な美しさ。
息をつめて静かにひっそりと感動している。


そうして、そのようにして、まどさんのように世界を見ることができたなら、
この世界の中で生きていることは素晴らしい不思議、死んでいくことも素晴らしい不思議、そんなふうに思えてくる。