アニーのかさ

アニーのかさアニーのかさ
リサ・グラフ
武富博子 訳
講談社


アニーのおにいちゃんが亡くなった。もう、おにいちゃんは12歳の誕生日を迎えることはないのです。
重たいテーマでした。
感想を書くのは難しいです。


アニーやアニーの家族のような思いをしている家庭は、きっとたくさんあることでしょう。
そして、さわやかな結末にほっとするのですが、それでも、やっぱり、さびしくて仕方ないのです。
死から始まった物語、もう二度と亡くなった人は帰ってこないのだ、ということが残ってしまう。
アニーの気持ちが丁寧に描かれていて、抱きしめたいくらい愛おしくて、
アニー(と、それからアニーの家族)のこれからに、笑顔がたくさんありますように、と心から願いました。
だから、この結末には、充分満足しながら、最後まで(読後も)喪失感から離れることはできなかった。


「かさ」ってそういう意味だったんですね。
いろいろな「かさ」がありますよね。
そして、いろいろな原因があって、かさを閉じることができなくなってしまった人は、たくさんいるのだと思います。
自分がかさをさしている、ということさえも気がつかず、認めないことだってあるだろう。

>かさをさすのは、ひとりでだってできるかもしれない。でも、かさを閉じるには、おおぜいの人たちの助けがいるんだ。
「おおぜいの人たち」に気がつく事のできない人たちもいるはず。
自分のかさの重さを支えるのにせいいっぱいで、人のかさに気がつくこともできないこともある。
そのために傷つけたり傷ついたりして、ますますかさを広げてしまうのかもしれない。
まずは、「かさをさしている」と気がついたところで、自分のかさをほんの少しでも閉じる努力をしなければ、
人のかさを閉じさせることなんてできないかもしれない。


ちょっぴり閉じればいいんです。
全部閉じなくてもいいんです。
全部閉じてしまわないほうがいいんです。
少し残った部分をずっと持っていてもいいんだよね。
表紙の絵のアニーのかさは、赤くてかわいらしいのです。そこに、降り注ぐ光の明るさ優しさが心に残ります。