8月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:5415ページ

犬は勘定に入れません…あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎犬は勘定に入れません…あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎
「ボートの三人男」がテムズ川を上り下りする物語なら、こちらは時間という川を上り下りする物語。最後までほとんどタイムラグ状態の読者で、時間旅行の理屈は、いまいち理解できていないのですが、充分に楽しかった。ユーモアいっぱいの文章をのんびり楽しんでいるうちに、こぶこぶがほぐれていく気持ちよさ。主人公が「ボートの三人男」に遭遇してしまう、嬉しいサービスもあり。
読了日:08月31日 著者:コニー・ウィリス
風車小屋だより (岩波文庫 赤 542-1)風車小屋だより (岩波文庫 赤 542-1)
(再読) アルルに近い丘の上の風車小屋で書かれた小品集。窓の向こうから聞こえるひつじも群れの鈴の音、二階の間借り人はフクロウ、ミストラルは激しく吹き、空はどこまでも青い。この特別な場所で書く、ということの喜びが、物語の隙間から立ち上ってくるよう。「コルニーユ親方」と「星」が特に好き。
読了日:08月27日 著者:ドーデー,Alphonse Daudet
八月の暑さのなかで――ホラー短編集 (岩波少年文庫)八月の暑さのなかで――ホラー短編集 (岩波少年文庫)
・・・へえー、これもホラーなんだ・・・もちろんぞくっとするし、怖い思いをさせられるのですが、後に残るのは、いやあな感じじゃないのです。うーん、いいもの読んだな、洒落たニクイ話だったな、と振り返ることができる、なんというか「上質」な味わいのある短編集なのでした。ホラー苦手、の看板、半分だけ(用心深いでしょ)降ろします。一番好きなのは「開け放たれた窓」でした。
読了日:08月26日 著者:
港町ヨコハマ 異人館の秘密港町ヨコハマ 異人館の秘密
ミステリですが、正直、ラストには少し疑問が残りました。登場人物たちの過去やそれにまつわる心情なども、わりとあっさりめだったので、今ひとつ気持ちを乗せていけなかったのかもしれません。この本の主人公は、きっと明治38年のヨコハマという町なのかな。軽めに流して、ああおもしろかった、と本を閉じるのが正解かな。
読了日:08月25日 著者:山崎 洋子
月と六ペンス (新潮文庫)月と六ペンス (新潮文庫)
とりつかれでもしたかのように生き急ぐ芸術家。なのに、その姿を描写するモームの筆は、寒々と冷静です。このアンバランスさに、ストリックランドが、というより、作者をも含めて狂気のようなものを感じてしまう。ストリックランドと作者(または語り手「僕」)が、ともに狂気の中にいる。真逆に見えて、実はそっくりなふたりなのではないか、とも思う。
読了日:08月24日 著者:サマセット・モーム
ぐるぐる猿と歌う鳥 (ミステリーランド)ぐるぐる猿と歌う鳥 (ミステリーランド)
懐かしいような、ほっとするような空気。不安な謎の影をちらつかせるのがますますいい。でも、ほんとは知っている。この風景が、どんなにあぶなっかしい土台の上に乗っているかを。そして、いつまでもいつまでも続いていくはずがないこと。だから、つかのまの一瞬が、こんなにも愛おしい。
読了日:08月22日 著者:加納 朋子
ボートの三人男 (中公文庫)ボートの三人男 (中公文庫)
こんなゆったりした休暇がわたしもほしいな。でもでも、絶対、こんなメンバーといっしょには過ごしたくない! 川であろうがなかろうが! と思います。だって、もし、こんな連中と行動をともにしたら、状況判断できるのはきっと私だけだろうし、ちゃんと動くのも私だけだろうからね。←おやおや、本の中で頻繁に聞いたような気がするセリフだ。
読了日:08月20日 著者:ジェローム・K.ジェローム
獣の奏者 (4)完結編獣の奏者 (4)完結編
最後に、後の事が描かれていたのがうれしかった。母たちに果たし得なかったことを彼が引き継いだこと、なんと途方もなく長い道だったか、と思います。母や母の母の苦しみがこんなに清々しい形に昇華した。どこかで母たちはみているだろうか。みていてほしい。
読了日:08月19日 著者:上橋 菜穂子
獣の奏者 (3)探求編獣の奏者 (3)探求編
予約待ち7カ月。やっと手許に来た本ですが、1・2巻の内容をかなり忘れている。読みながら、ああ、そんなことがあったっけなあ、と確認しつつ・・・そうだそうだ、ソヨンがエリンに残した言葉は意味深そうで謎のままだった。懐かしい場面を思い出しながら先を読みます。しかし、エリン一家、望みとは遠く、なんと過酷な人生を歩まなければならないのだろう。並みはずれた才能を持ったために。
読了日:08月18日 著者:上橋 菜穂子
マルカの長い旅マルカの長い旅
ただ、生きろ生きろと願いながら、ひたすらページを繰りながら、生き抜くために、ごっそりとそぎ落とされていくものにぞっとする。人ってなんだろう。一方で、このただならぬ緊迫感の中での母と16歳の娘のぎくしゃくした関係があまりに現実的すぎてむしろ非現実的に感じるようでした。否応なしにばらばらになっていくもの、必死につなぎとめようとするもの、そして、何よりも生きること人であることを、強く激しく問いかけれられているようで、正直目をそらしたくなる。
読了日:08月17日 著者:ミリヤム・プレスラー
屋根にのぼって屋根にのぼって
角度を変えれば違うふうに見えるし、思いがけない発見もあるかもしれない。物語の最後の屋根の上、とっても居心地よさそう。みんながみんな善意の人である場合、事が起こればほんとに厄介だけど、事を収めるにはこんなにも気持ちがいい。
読了日:08月16日 著者:オードリー コルンビス
ガラガラヘビの味――アメリカ子ども詩集 (岩波少年文庫)ガラガラヘビの味――アメリカ子ども詩集 (岩波少年文庫)
有名無名関係なく、もしこの本にとりあげられた詩たちに共通点があるとしたら、敷居がすごく低い、ということ。それは訳にもよるのかもしれない。詩人とただの人の境を簡単に飛び越して、だれでも詩人になれるような気がするし、この詩の続きを歌っている気持ちになる。それが楽しい。
読了日:08月12日 著者:
二週間の休暇 (MouRa)二週間の休暇 (MouRa)
翼があるのに飛べない鳥たち。過去を思い出せない主人公。どちらも、大切なものの場所がわからないで、わからないままに肩寄せ合って暮らす。その不安定感のなかから生まれる共感。何か大切なもの(だと思っているもの)を思い切って担保に入れないと、こんな休暇は味わえないのかな。
読了日:08月11日 著者:フジモト マサル
Hate That Cat: A NovelHate That Cat: A Novel
『あの犬が好き』が「詩と少年と犬の物語」だったように、この本は「詩(パワーアップした詩)と少年と猫の物語」です。と、同時に、目の見えないおかあさんへの思いの物語でもあります。あふれてくる思いを言葉に変えて謳いあげることで、心を開放し、解放していく。天高く昇っていく思いのすがすがしさ。教室の壁という壁が詩人で埋まっっていくストレッチべり先生の教室の素敵なこと。
読了日:08月10日 著者:Sharon Creech
靴を売るシンデレラ (SUPER!YA)靴を売るシンデレラ (SUPER!YA)
本人が成長することで、重荷がもはやそんなに重くなくなることはある。そのための旅が素晴らしくて、かっこいいシニアとティーンエイジャーの最強コンビにパワーをもらった。ジェナの人生に幸あれ、と祈ります。いえ、祈らなくても大丈夫。私なんかよりジェナのほうがずっと堂々としていて強くなっている。頼もしい。そうだ、私の靴、ジェナに選んでもらいたいなあ。
読了日:08月09日 著者:ジョーン・バウアー
パイレーツ―掠奪海域 (ハヤカワ・ノヴェルズ)パイレーツ―掠奪海域 (ハヤカワ・ノヴェルズ)
登場人物たちのおおいに癖のある濃い個性、次々訪れるたくさんの見せ場も、なんて派手で爽快なんだろう。この本が世に出た事にも驚くべき事情があり、面白い本は、本の周辺まで物語がある、と思ったのでした。夏の暑さを退ける胸のすく冒険物語でした。ああ面白かった、と本を閉じる幸せ。
読了日:08月06日 著者:マイクル・クライトン
くじらの歌くじらの歌
生きていくことの裏表。きれいごとだけではすまない暗い部分。人は複雑なもの。不気味な暗がりがあるから、その対極のように広がる静かで平和な夢は、とても優しく感じます。子どもはどう感じるのか、大人はどう感じるのか。歳を重ねるごとに、この本はどんなふうに見えてくるのか。年齢とともに、受け取るものが変わっていく本、変わっていくことが楽しみな本だと思います。
読了日:08月05日 著者:ウーリー・オルレブ
移動祝祭日 (新潮文庫)移動祝祭日 (新潮文庫)
富も名声もないけれど、夢と若さはたっぷり。生活を愛し、何よりも書くことを純粋に愛した日々が、まぶしくて悲しいくらい。フィッツジェラルドとの素晴らしいドライブ旅行(笑)が素敵すぎました。愛すべき(?)呑み助め。
読了日:08月03日 著者:アーネスト ヘミングウェイ

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