二年間の休暇(上下)

二年間の休暇(上) (福音館文庫) 二年間の休暇(下) (福音館文庫) 二年間の休暇(上)
二年間の休暇(下)
ジュール・ベルヌ
朝倉剛 訳
福音館文庫


子どものとき読んだのは、完訳であるはずもないし、それどころか相当端折ってあったはず。
記憶もあいまいで、船が難破して、少年15人だけが助かって無人島に漂着して、助けあって生き延びる話、最後は救助されたんだっけね、
とその程度の認識でした。
それでも、通して読んだらきっとかなり違うんだろうなあ、とうすうす思っていましたが、
なまじっか、あらすじ(?)を知っているつもりでいたものだから、なかなか改めて完訳本を読もうという気持ちになれずにいました。
やっぱり!
ほらほら、最初に思った通りの感想ですよ。こんなにおもしろいなんて思わなかったよ!
長い年月を経て残っている物語ですものね。それはそれだけの理由があるってことですね。 


こんなにおもしろい話だったんですねー。
わたしの記憶の曖昧さはもう置いておき、最初から引き込まれました。
ことに、後半、無人島に15人以外の人影が見えたあたりから、緊張感がぐんと高まり、このあとはもう一気に読んでしまいました。
あー、おもしろかった!(私、田んぼに草刈りに行くはずだったのよ。でもこんな時間になっちゃった^^)
15人の少年たちそれぞれに個性があり、それぞれに得意なことも不得意なこともあり、助けあいもすれば、仲たがいもするし、
冒険もあるし、そうして、切羽詰まった状況の中で、ひとつの家族として、まとまっていきます。
それぞれに、プライドや意地、見栄などがあったり、人には言えない深い悩みを抱えていたり、
そうしたばらばらな気持ちが段々に寄り添いあっていく過程は素直に拍手でした。
それと好きなのは、島を探検して、地図の探検済みの場所に名前をつけていくところ。地図を作る仕事ってなんとわくわくすることでしょう。


正直、こんなにうまくいくかな、と首をかしげたくなるような場面がちらほら出てきたし、
少年たちがあまりにできすぎている、と感じたりもしたのですが、それは大人の見方でしょうか。
それはそれ。そんなの、おもしろさにちっとも水を差すことになりはしません。


冒険物語はもちろん文句なしの楽しさなのですが、その一方で、彼らの生活にひたすら感心します。
彼らが、二年間の漂流生活を生き延びられた秘密は、規律正しい生活にあるのではないでしょうか。
この島を彼らの植民地、と考え、自分たちの『大統領』を選びます。そして、大統領をリーダーとして、まとまっていられたこと。
そして、規律。それぞれに役割分担を決め、カレンダーや時間を記録しながら、一日の時間割を決めて、規則正しい生活をするのです。
誰もが等しく労働の任を負い、そして、決まった時間にはそろって勉強をするのです。学校生活の続きのように。驚き。
非常事態の中でも、この規律は、彼らが文明人であるという誇りと、いつかもとの生活に戻るという希望を、守り続けたのだと思います。


今読んでも十分おもしろいのですが、やっぱり、これは子どものときに、出会いたかったです。
きっとのめりこんで読んだにちがいない。
中学時代、ジュール・ベルヌが大好き、っていう友達がいたのです。当時、この本の話ができたら、きっと楽しかっただろうなあ。
遅ればせながら、『海底二万里』も『神秘の島』も、これから読んでみたいと思います。