二つの祖国(二)

二つの祖国 第2巻 (新潮文庫 や 5-46)二つの祖国 第2巻
山崎豊子
新潮文庫


二巻。まだ、やっと半分だ。
アメリ日系人たちの第二次世界大戦末期から戦後へ。いったいどこまで苛め抜かれるのだろう。
だれに?
二つの祖国。祖国って何だろう。
祖国への忠誠、祖国への愛を、誰が何の権利を持って量ろうというのだろう。
第一量れるものなのか。
最初から何度も何度もそう訊ねながら読みました。


天羽三人兄弟。
アメリカで教育を受け、アメリカ市民として従軍した勇。
日本で薩摩男児として教育を受け、日本で召集された忠。
乱暴な言い方になってしまうのですが、一点の曇りもなく自分の立場を主張できる彼らは、ある意味幸せなんじゃないか、とさえ思いました。
アメリカにも日本にもともに深い思いを持ち、どちらの言語にも文化・伝統にも通じているため、
かえって自分はいったい何者なのか、深く悩まずにいられない賢治が一番痛ましく、皮肉だとも感じました。


登場人物誰もに、それぞれ思い入れがある。
そのように読者は丁寧に彼らひとりひとりと付き合わされる。
それぞれの気持ちがよくわかる。
だけど、そのだれかれが、ほかのだれかれに対したとき、なぜこんなにも分かり合えないのだろう。
戦争末期、フィリピン山中に敵味方に分かれた兄弟がいる。
じわりじわりと再会の時が近づいてくる、あの緊張感をはらんだ場面は、たまりませんでした。
もうやめてくれ、といいたいくらい(笑)
深い思いを寄せる祖国。どのように生きたらいいのかと深く悩み、悩むほどに愛した二つの祖国。
皮肉なことにその二つの祖国を思う気持ちが、互いにわかりあうことを阻んでいるようでさえある。


二つの祖国を背負った二世たちの特殊な境遇を、それぞれの国が(戦争が)、それぞれに巧みに利用する。
それぞれの心を踏みにじってもなお。
なんという残酷さ。
でも、これと同じことが、実際に起こっていたんですよね。


戦争が終わった。
でもまだ、この物語はやっと半分なのだ、と思うと不安にならずにはいられないのです。
ここにいる人たちにこれからなにがおこるのだろう。
今までだって、これでもかこれでもかってくらいの苦しみをとことん味わい、それでもなお正気を保っていられる強さに驚きさえしたのです。
この先何が起こるのだろうか。不安なまま終わります。
でも読まないわけにはいかない。


東京裁判が始まります。

>一体、正義とは何だろうか。戦争に勝った者と、敗けた者との間には、いかなる正義が存在するのだろう――。戦争の愚かさと悲惨さ、非人道性を、これから開かれる東京裁判を通して、ほんとうに世界に知らしむることができるのであろうか。
しんどい読書、といってしまったら、作中人物たちに申し訳ない、というおかしな義理が生まれつつあります。
とはいえ、二巻まで読み終わったところで、ひとまず深呼吸、と思ったら、図書館から「予約資料の準備が整いました」とのご連絡が・・・
すでに三巻がお迎えを待っているようです^^