5月の読書メーター
読んだ本の数:31冊
読んだページ数:8140ページ

エマ (下) (ちくま文庫)エマ (下) (ちくま文庫)
上流社会のお付き合いって窮屈そう・面倒くさそう。迷惑な勘違い女のはずなのに、憎めない主人公、根はやさしくて素直なのよね。いつの間にか結構好きになっていました。個性際立つ登場人物たちが盛り上げる喜劇。結末のまとまりのよさも、楽しかった。
読了日:05月30日 著者:ジェイン・オースティン
エマ (上) (ちくま文庫)エマ (上) (ちくま文庫)
初オースティン。主人公はもとより、振り回されて喜んでいる(?)周りの人たちまで、新春かくし芸大会のようなおめでたさではありませんか。階級意識の高慢さは、あまりに露骨で笑ってしまう。下巻へ〜。
読了日:05月28日 著者:ジェイン・オースティン
クレイクレイ
とても力強く、それでいて悲しいくらい美しい物語でした。土くれが命を持って動くことよりも、土くれが土くれのままで命を生かし育てることのほうが、大きな魔法のように思えました。伸びていく植物には希望が宿っていました。
読了日:05月27日 著者:デイヴィッド アーモンド
人間だって空を飛べる ~アメリカ黒人民話集~ (福音館文庫)人間だって空を飛べる ~アメリカ黒人民話集~ (福音館文庫)
自由を奪われ、読み書きを禁じられた人たちのあいだの口承文学は、アメリカの伝統の一部であり、歴史の一部だと、編者ハミルトンはいいます。同時に世界中の共通財産でもあります。悲しみに裏打ちされながらも力強く、希望さえ感じられる物語たちを今手渡してもらえたということは、確かに『人間だって空を飛べる』ということだと思います。
読了日:05月26日 著者:ヴァージニア ハミルトン
学校の悲しみ学校の悲しみ
生徒の若さをちやほやしたり消費社会への誘導を『教育』の目的にすり替えることがいちばん卑しいことに感じた。親としては、即物的によい暮らしを手に入れる手段を学校教育の目的と混同すまい。豊かな人生を築く底力を目的に、子(親自身も)のお尻を蹴り上げても、当分はしっかり学ばねばと思っています。学問に王道なし。
読了日:05月25日 著者:ダニエル・ペナック
九年目の魔法 (創元推理文庫)九年目の魔法 (創元推理文庫)
妖精譚を下敷き(?)にした不思議で幻想的な物語。めくるめくような謎と冒険。魅力的な登場人物。懐かしくも輝かしい青春。そして素晴らしい本本本。物語全体に漂う雰囲気にも魅了され、酔いました。怒涛のような終盤には、すっかり置いてきぼりにされてしまいました(笑)が、それでも(それだから?)この本は十分おもしろかったです。・・・でも、彼ら、結局、どうなったの(笑)
読了日:05月24日 著者:ダイアナ・ウィン ジョーンズ
妖精の騎士タム・リン妖精の騎士タム・リン
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『九年目の魔法』を読む前の予習のつもりで選んだ絵本。ロマンチックな物語でした。スコットランド夏至の夜のひんやりとした夜気や薔薇の香りの中に、まだ、いるような気がします。
読了日:05月24日 著者:スーザン クーパー
渡りの足跡渡りの足跡
いつの間にか、鳥の物語は、わたしたち人間の物語になっている。鳥の渡りは、私たちの渡りであり、『渡り』はなぜ必要か、の問いかけは、鳥ではなく、人への問いかけでした。軽やかな文章ですが、伝えようとしていることは重たいものでした。『帰りたい』という衝動から『渡り』が始まるなら、「帰りたい」と思える原風景を手放したくないと思います。
読了日:05月22日 著者:梨木 香歩
空の名前空の名前
空にはこんなにたくさんの名前があった。名前だけ続けて読んだら、それだけで詩になってしまいそう。わたしたちは、ずっと空を見上げながら暮らしてきたんだなあ、としみじみ思う。空の名前をよみ込んだ歌や句、写真もよかったです。
読了日:05月21日 著者:高橋 健司
人喰い鬼のお愉しみ (白水Uブックス―海外小説の誘惑)人喰い鬼のお愉しみ (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
かなりブラックなミステリなんじゃないか、と思うのですが、読後感はさわやかでした。主人公をめぐる人間関係の温かさにほのぼのしてしまいます。読みにくさはこの本で克服できた、と思っているので、続きを読む時にはスースーいけるのではないか、と期待します。
読了日:05月21日 著者:ダニエル ペナック
わたしの赤い自転車 (柏艪舎文芸シリーズ)わたしの赤い自転車 (柏艪舎文芸シリーズ)
過去にもどることはできないし、そうしたいわけでもない。でも過去のすべてが今の自分を形づくっているのだよね。現在、ここにいる自分の生き方をまずまずこれでいい、と思えるなら、失われた時代を(たとえ、あれこれの欠点があったとしても)幸福な思いをもって振り返ることができる。
読了日:05月19日 著者:アデレ グリセンディ
メープルヒルの奇跡メープルヒルの奇跡
物語全体からメープルシロップの甘い匂いが漂ってくるよう。ここではきっと『奇跡』が起こる、と信じることは、実際に何がおこったか、ということよりも、大切なことかもしれない。ところで、インクにするベリーなんてあるんですね。ベリー・インクで書かれた手紙なんて素敵。
読了日:05月18日 著者:ヴァージニア ソレンセン
長田弘詩集 (ハルキ文庫)長田弘詩集 (ハルキ文庫)
難しい言葉はひとつもないのに、その意味は難しい。優しいことばなのに、その意味はストイック。「日差し」のように「ことば」を感じ、「いい大根のような一日」を過ごせるように、いつかわたしもなりたい。
読了日:05月18日 著者:長田 弘
里山の少年 (新潮文庫)里山の少年 (新潮文庫)
人の暮らしは変わり、里山の風景は、変貌していく。一概に、あるがままの風景を守ることが人の幸福に繋がるわけではないこと、場合によっては自然保護でさえないこともあるのだ、と無念な気持ちとともに知ります。挟み込まれた美しい仰木周辺の里山の写真。この写真のままの風景は、あと何年残るのだろうか。もう既にないのだろうか。
読了日:05月17日 著者:今森 光彦
ぬくい山のきつね (風の文学館2)ぬくい山のきつね (風の文学館2)
過疎化、とか高齢化、とか・・・そういう言葉と現象を知っている、と言ったら、この物語の中の人々のことを何も知らない、と言っているのと同じような気がしてきます。たぶん、そんなことはどうでもいいことなんだろう。ここで暮らす。ここで生きてここで死ぬ。死んでここに帰る。土になる。山になる。「山笑う」という言葉がふと浮かびました。その言葉が今の気持ちにぴったり。
読了日:05月17日 著者:最上 一平
銀河に口笛銀河に口笛
懐かしい下町の風景に溶かしこんだありえない不思議は、ゆらり、陽炎の向こうにぼんやりと見える風景のなかで、むしろ自然な感じ。ばらばらになった仲間たちや、そのまわりの友だちたちみんな。ぼーっと明るく輝く回想の中で、あの笑顔と歓声の中にいたんだよね。
読了日:05月16日 著者:朱川 湊人
博物館の裏庭で (新潮クレスト・ブックス)博物館の裏庭で (新潮クレスト・ブックス)
逞しく貪欲に生きる姿は、端から見ればかっこ悪いし、メチャクチャ滑稽です。でも、かっこわるさが、愛しい。かわいげのなさが愛しい。この愛しさは、彼らの滑稽な人生のなかに、生きることの悲しみが透けて見えるから。
読了日:05月15日 著者:ケイト アトキンソン
更級日記 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)更級日記 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)
かなり地味な淋しい暮らしをしていたように思える孝標女。そんな彼女の日々を源氏物語を初めとする文学が照らしたのだろう。よかったね、文学好きで。彼女が、あれほどに憧れた源氏物語と、彼女の書いた日記とが、今、並んで全集などに入っていること、もし知ったら、どんなふうに思うだろう。
読了日:05月14日 著者:
白い牙 (新潮文庫 (ロ-3-1))白い牙 (新潮文庫 (ロ-3-1))
第一章がいいです。ぴしっとひきしまった文章は、それだけでも短編として読み応えがありました。『火を熾す』(ジャック・ロンドン、それしか読んでいないのですが)を思い出します。
読了日:05月13日 著者:ジャック・ロンドン
われらをめぐる海 (ハヤカワ文庫 NF (5))われらをめぐる海 (ハヤカワ文庫 NF (5))
つくづく論理的な文章が苦手で、時間をかけてやっと読み終えました。でも、この本は大好きな本になりました。本当に美しかった。海をめぐる自然科学の本ですが、むしろ、文中に出てきた「叙事詩」という言葉がぴったりだと思いました。何十億年もかけて歌われる地球の叙事詩。ことに、第六章「永い雪降り」は、すばらしかったです。
読了日:05月10日 著者:レイチェル・カースン
「少女神」第9号「少女神」第9号
形じゃない、時代でもない。彼女たちのスタイルや環境にはびっくりしたり、せつなくなったりするけど、純で、素直で、まっすぐ伸びる若木のようなパワーを感じる。ほんとにかわいいと思う。少女たちは、時代の波やさまざまな甘言には損なわれない。そんな彼女たちにいつのまにか勇気をもらっているのでした。ううーん、大人、しっかりしよう、と思います。
読了日:05月09日 著者:フランチェスカ・リア ブロック
東方綺譚 (白水Uブックス (69))東方綺譚 (白水Uブックス (69))
少し残酷で官能的で、限りなく美しい御伽噺でした。あぁ、書く言葉が浮かんできません。美しすぎます。『老絵師の行方』が一番好き。それから『燕の聖母』。・・・でも、源氏の君の物語では、最後はやっぱり歌を詠んでほしかったな、と無理難題を言ってみる。
読了日:05月08日 著者:マルグリット・ユルスナール
バンビ―森の生活の物語 (岩波少年文庫 (2078))バンビ―森の生活の物語 (岩波少年文庫 (2078))
その理由はだれも教えてくれない。いまに自分でわかるようになるまで待つ、ということ。感じたことだけを心に留めて。命を守るためにひとりでいなければならないということ。必死で生にしがみつくように生き抜く森の生活の中で、それでも「生きることは美しいことでした」といえるんだ。
読了日:05月07日 著者:ザルテン
のんきなりゅうのんきなりゅう
いつまでも暮れない明るい夏の夕べに、草の上に座って物語をするりゅうと少年の姿がほのぼのと好きです。うふふ、『はなのすきなうし』みたい。今、日本は五月。この気持ちの良い夕べが、イギリスの夏に繋がっているような気がしています。
読了日:05月06日 著者:ケネス グレアム
手紙、栞を添えて (ちくま文庫)手紙、栞を添えて (ちくま文庫)
互いに一面識もないままに書きたい、という往復書簡(の形の読書論?)は、「チャリングクロス街84番地」を思い出させ、わくわくします。それにしてもなんと水準の高い丁々発止の文学論。文学論しりとりで遊んでいるみたい。楽しいけど自分の教養のなさが情けない、とも思ったのでした。そして「文学とは、幸せそのもの」とはなんてうれしい言葉。
読了日:05月05日 著者:辻 邦生,水村 美苗
女帝 わが名は則天武后女帝 わが名は則天武后
孤独地獄に雁字搦めに縛られ、ひとりの味方もなく、ただ巨大な権力だけを持って、皇帝として君臨する。なんという痛ましさだろう。後年、勝者の歴史の中で、悪女と決め付けられましたが、在位中に為した事業は、中国の礎を築き、後世に残ったことから、彼女の孤独に意味を見出したい。名ではなく実として。
読了日:05月05日 著者:山颯
明日につづくリズム (teens’ best selections)明日につづくリズム (teens’ best selections)
島に残るもの、出て行くもの、それぞれに夢を追い、たぶん時々挫折なども味わいながら、ふりかえってみたときに、あの大自然と友と家族の笑顔を思い出せたら幸せじゃないか。「ガンバロ。いろいろあるけど、ね、ガンバロ」 そして、涙のなかで聞いたポルノの思い出に飾られた青春があったなら。
読了日:05月04日 著者:八束 澄子
山本容子の姫君たち himegimi@heian (100周年書き下ろし)山本容子の姫君たち himegimi@heian (100周年書き下ろし)
山本容子展にて購入? 唇が厚くて、ハナペチャのお姫様はちっとも美人じゃない。瞳は、はしたないくらいきらきらしてる。太い眉には我をまげない意志の強さを感じる。土臭くパワフル。なのに、はっとするほどの香気と気品も。そして、とっても可愛いい。高校の古典以来、とんとご無沙汰の平安文学の中にはこんな愛くるしいお姫様たちが住んでいたんですね。
読了日:05月03日 著者:山本 容子
山本容子のジャズ絵本 Jazzing山本容子のジャズ絵本 Jazzing
山本容子展にて購入? 絵から音楽が聞こえてくるよう。おまけ(?)のCDから聞こえてくるのではなくて。一枚一枚、ページごとに額に入れて、ずらりと並べて部屋に飾りたい。
読了日:05月03日 著者:山本 容子
アムステルダム 新潮クレストブックスアムステルダム 新潮クレストブックス
これ、コメディですよね? どたばたの狂騒曲ですよね? まじめに読んでいましたが、最後まできて、やっと気がつきました。深刻なはずのラスト周辺は、もう不謹慎だろうがなんだろうが笑うしかないんじゃないか、と。しかし辛らつ〜。一人勝ちは、あいつかぁ・・・
読了日:05月03日 著者:イアン マキューアン
第七官界彷徨 (河出文庫)第七官界彷徨 (河出文庫)
独特の芳香(!)を醸す物語は、とんでもないコメディかと思うのですが、あわあわとした哀感も同時に感じます。どこか現実離れした登場人物は、みんな蘚の化身に思えてきました。不思議な感性にびっくりですが、心地いい。ほんとに昭和ヒトケタですか、これ書かれたの。不思議な世界を彷徨してきました。
読了日:05月02日 著者:尾崎 翠

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