更科日記 (ビギナーズ・クラシックス)

更級日記 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)更級日記 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)
菅原孝標女
川村裕子 編
角川ソフィア文庫



山本容子の姫君たち』のなかで、一番読んでみたかったのが更科日記。
最初、詳しい脚注のついた原典本(?)に挑戦しようとしましたが、数ページに満たない内にあえなく挫折しました。
高校の古文の時間を寝てすごしたつけなのでした^^
で、手にいれたのが、このビギナーズ・クラシックス日本の古典というシリーズの一冊です。
段ごとに(長いののは段を二回、三回にわけて)、まず最初に口語訳をおき、そのあと原文、それから解説がつづく、
という構成になっています。
最初に口語訳で意味がわかるので、そのあとにつづく古文も、単語(?)も文法も、忘れちゃっても、知らなくても、
なんとなーくわかったような気持ちにさせてくれる嬉しい構成なのです。
ありがたいです。


「・・・自分の揺れる気持ちをもうひとりの自分がジッとみつめているような所が日記文学の奥深さ」
などとの解説にはああ、そういうふうに読むものなのか、と古文ビギナー(永遠にビギナーのままかも)にはありがたいのでした。
文章は短くて、ほんとに必要最低限の言葉しかない文章から、
情景や、状況、心情、前後の事情まで推理(?)しなければならないのがこの時代の文章の特徴でしょうか。
あやうく読み逃してしまいそうな言葉の隠された事情(?)など、解説はほんとに助かりました。
しかし・・・御簾=ブラインド、という注。各章の章題『パートタイムの宮仕え』とか『かっこいい男性登場!』とか。
分かり易すぎて笑ってしまって・・・でも王朝文学のみやびな雰囲気とは言いがたいぞよ。


菅原孝標女
少女時代から、三十歳をすぎて、結婚したのちまでも、源氏物語に憧れ、そんな夢みたいなことばかり、と自嘲しながらも、
物語のようなことが自分にも起こらないかなと考えている、かなりのロマンチストです。
彼女の憧れ日記のような気もしました。
かっこいい男性登場!と、彼女の前にさっそうと現れた源資通とどうにかなるかと思ったら、なんのこともなくいつのまにか消えている。
けど、たぶん恋だったんだろうなあ。そして、失恋したんだろうなあ。
資通が文面から消えてから、ばかに落ち着いてしまって、夫や子を思う日記を書いたりしているし・・・


少女時代、父の任地から都にのぼる長い旅は、当時の女性にとってはまれに見る大冒険だったとのこと。
でも、その後の人生は、決して派手ではない。
宮仕えも苦手だし、華やかさからは遠く離れて、かなり地味な、むしろ寂しい暮らしのようでした。
そんな彼女の日々を照らしたのが源氏物語を初めとする文学だったのでしょう。
あれほどに憧れ、ときめき、夢中になった源氏物語と、彼女の書いた日記とが、今、並んで全集などに入ったりして、
現代に残っていること、彼女が知ったら、どんなふうに思うだろう。