「少女神」第9号

「少女神」第9号「少女神」第9号
フランチェスカ・リア・ブロック
金原瑞人 訳
理論社


きらびやかな本です。(本文の活字の色合いまで・・・びっくりですが、この本には、これがしっくりくるのです)
アニメ・キャラクターたちの張り付いたような笑顔。
蛍光ペンか看板インクか、と思うようなまぶしくて明るい色の爆発。
ビニールやプラスチックでできたまがい物の輝き。
そんながちゃがちゃしたイメージに埋もれた少女たち。
パンク、ロック、リップスティック、サングラス・・・
ドラック、セックス、ゲイにレズビアン、・・・
危ない言い方だけど一つの文化(?)になりつつあるのか、と思ってくらくらする。


びっくりしました。
これが、子どもの本として書かれたこと・・・
日本でこの本が出たのは10年も前。
このころには作者フランチェスか・リア・ブロックは、アメリカでは絶大な人気を誇っていたという。


あたりまえのように彼女たちが享受しているものは、大人たちが作り出したもの。
自分たちの個性だと思っているものも、実は染められた結果なのかもしれないのです。
・・・なんだか彼女たちはぶかぶかの服を着せられているみたいにも思えるのです。
ぶかぶかも、ぶかぶかなりに似合ってしまうんだけどね。
あまりに衝撃的で、攻撃的な文化(?)の洪水の中で、上手に泳ぎ渡る少女たち。
なんだかせつなくてたまらなくなってしまう。


だけど。だけどです。
彼女たちをよく見、彼女たちの行動を追ってみる。
彼女たちの身に着けた人工の輝きの中から、彼女たち本来の輝きが冴え渡るのを感じます。
純で、素直で、必死に生きている。まっすぐ自分の将来を見据えている。彼女たちの逞しさに驚くのです。
形じゃない、見てくれじゃない。時代でもない。
大人になる直前の、だれもが知っている甘酸っぱいような懐かしさ。
言ってしまえばクサイのですが、生きていることをまるごと素晴らしいことだと信じられる何かが、ある。
まっすぐ上に向かって伸びようとする若木のようなパワーを感じる。
少女たちは、時代の波や流行やさまざまな甘言には損なわれないのだと。
そして、不思議に彼女たちに勇気をもらっている自分に気がつくのです。