今月は、長田弘さんのエッセイ『アメリカの61の風景』がダントツで好きでした。継いで、読み応えのある『精霊たちの家』。
今月出会った絵本は、どれも心に残るものばかりでした。『百年の家』『リスとはるの森』『すみ鬼にげた』『ないしょのおともだち』

4月の読書メーター
読んだ本の数:28冊
読んだページ数:7153ページ

ないしょのおともだちないしょのおともだち
家が、起こっていることの何もかもを見て、くすくす笑ってるような気がする。物語もすてきだけど、画家は、描くことを存分に楽しんだにちがいない、と想像しちゃいます。だって、どのページも細部まで何度でも見たくなるし、こんなにわくわくする。裏表紙のスプーンとフォークににこっ。わたしも「内緒」にまぜて、とお願いしたくなります。「大きなひそひそ声」で。
読了日:04月30日 著者:ビバリー ドノフリオ
少年譜少年譜
何もかも満たされた子ども時代なんてないのかもしれません。鮮やかに記憶に残るのは、暗闇のなかにいる時に、灯された明かりのこと。それは、闇から自分を引き上げることはできないけれど、暗い中でりんと顔をあげさせてくれるものでした。読み終えて、『笛の音』の和尚の言葉「励め」が、耳の奥に残ります。
読了日:04月30日 著者:伊集院 静
たんぽぽの日々たんぽぽの日々
この歌をうたった俵万智さんが他人のはずがない。これは私自身じゃないか、と罰当たりなことを考えるほど、これら全ての歌に、覚えのある風景、覚えのある気持ちがよみがえってくる。なんて無我夢中で、なんて幸せな時だったんだろう。
読了日:04月28日 著者:俵 万智
鹿と少年(下) (光文社古典新訳文庫)鹿と少年(下) (光文社古典新訳文庫)
残酷で悲しい。それだからこそ美しい自然。それは、彼がこれから分け入っていく人生の象徴でもあるかと思います。それを自ら選び取る覚悟を決めたときが、少年期の終わり。これが成長なのだ、成長って、こんなにきついものなのだ、と思い知らされました。知っているつもりの『子鹿物語』は、ここにはない。最後の一文を読みきったとき、しばらく何も言えませんでした。
読了日:04月27日 著者:ローリングズ
鹿と少年(上) (光文社古典新訳文庫)鹿と少年(上) (光文社古典新訳文庫)
自然描写にため息。とても美しくて、とても危険な、森の豊穣。家族、近隣の間の緊張感をはらんだ微妙さのなかで、ゆったりと心通い合う父子の関係がすばらしい。少年の、自分だけの愛する動物を、と願う一途さ、瑞々しい感性など、心に残りました。
読了日:04月25日 著者:ローリングズ
コブタのしたことコブタのしたこと
はらはらして先を読むのが苦しかった。主人公を引き戻したいと思いながら読んでいた。主人公の気持ちが丁寧に描かれていて、やりきれない気持ちになりました。表紙と裏表紙の絵、好きです。表紙は、あの場面だなあ。裏表紙もきっと表紙と同じ場所。でも、無機質な電柱が生きた樹木に変わっている。誰にも寄りかかられずにすっくりとたっている。
読了日:04月24日 著者:ミレイユ ヘウス
ボート (新潮クレスト・ブックス)ボート (新潮クレスト・ブックス)
表に出ない悲しみや壮絶な感情の端っこを垣間見たような気がするのに、それをかき消すように、すべてをあいまいにぼかした終わり方。・・・できれば忘れて欲しい、と言われたみたい。ほら、こんなに濃い背景のなかでは、そんな小さなこと、どうでもいいんだよ、そうだろ。そんなふうに言われているみたい。でも、忘れないよ、ちらり仄見えたそれのこと。
読了日:04月23日 著者:ナム リー
リスとはるの森リスとはるの森
ああ、春春。色がいっぱいで浮かれてしまいます。そして、あいかわらずの素敵なお友だち。最後は(ごめんねっ)思わず噴出してしまいました。うう、辛い。でも、くじけるな。「なにはともあれ、はるは まだこれからです。」
読了日:04月21日 著者:ゼバスティアン メッシェンモーザー
すてきなルーちゃんすてきなルーちゃん
最後に、ルーちゃんの描いた絵を見せてもらい、別のお話を聞かせてもらったようで、楽しい気持ちになりました。これは読者のためにルーちゃんがこっそり聞かせてくれたお話でしょうか。(作者さん同志が笑いながら目配せし合っているような)
読了日:04月21日 著者:たかどの ほうこ
白い花と鳥たちの祈り白い花と鳥たちの祈り
追い詰められていく孤独感がリアルであると同時に、癒しの過程の丁寧さ、確かさに、圧倒され、胸がいっぱいになってしまう。読みながら、作者はどういう人なんだろう、なんでこんなことを知っているのだろう、と何度も思いました。自分をさらけ出して、自分を許し、開放していく。読後感爽やか。
読了日:04月21日 著者:河原 千恵子
肩胛骨は翼のなごり (創元推理文庫)肩胛骨は翼のなごり (創元推理文庫)
マイケルの不安な気持ちと切ない祈りが混ざり合って結晶したような「不可思議な存在」スケリグ。やがて、「不可思議な存在」は、この世のすべてこそだったのだと知ります。混沌とした世界の中にちらちらと耀くのは小さな命、祈り、友情。なんて美しい発見なのだろう。
読了日:04月18日 著者:デイヴィッド アーモンド
かはたれ―散在ガ池の河童猫 (福音館創作童話シリーズ)かはたれ―散在ガ池の河童猫 (福音館創作童話シリーズ)
(再読)優しい言葉が降ってくるようで、心がしっとりと潤ってくる。麻のおかあさんの「耳に聞こえない音楽」も素敵だけれど、おとうさんの手紙の探検家も素敵。笛吹きに置いていかれた子どもの話が今日は心に残りました。時々読み返そう。
読了日:04月17日 著者:朽木 祥
すみ鬼にげた (福音館創作童話シリーズ)すみ鬼にげた (福音館創作童話シリーズ)
唐招提寺金堂の屋根を四隅から支えている鬼がいるそうです。鬼の無念さと、少年を残して死んだ父の無念さが重なるような気がする。父は独楽回しがじょうずだっただろうか。少年を肩に乗せてくれたりもしただろうか。父は少年に独楽をつくってくれたのかもしれない。唐招提寺に本物のすみ鬼を見に行きたくなります。
読了日:04月17日 著者:岩城範枝
夢の彼方への旅夢の彼方への旅
密林とモダンな都市が渾然とした不思議な空間に劇的な濃い冒険物語が良く似合いました。エイキンなど昔の児童文学を思い出してわくわくしてしまいます。必ず嬉しい結末が待っている、という絶対の信頼を寄せて読めるのです。小公子はじめバーネットの児童文学などもちらほらと仕込まれていて楽しかった。
読了日:04月17日 著者:エヴァ イボットソン
岸辺の旅岸辺の旅
生きてきた今日までを丁寧にさすり、よじれたり、しわになったりしたところを、そっと直していくような旅でした。死を道連れにしたとき、もしかしたらいろいろなしがらみが落ちて、もっともピュアな思いだけが残るのかもしれない。自分の日々を見つめなおしたりして。一人でふたりぶんの荷物を持って歩く日がいつか来るかどうかわからないけれど、重たくてもふたりぶんしっかり持って歩いていいけたらいいと思う。
読了日:04月15日 著者:湯本 香樹実
初夜 (新潮クレスト・ブックス)初夜 (新潮クレスト・ブックス)
決して不幸とは言えない人生。だから、いっそうこの苦さが身近です。不幸じゃない分、きっと何度も振り返って、反芻しないではいられない。・・・それは残酷だけど同時に甘美な後味になります。
読了日:04月14日 著者:イアン・マキューアン
百年の家 (講談社の翻訳絵本)百年の家 (講談社の翻訳絵本)
美しい絵と詩に導かれるままに、玄関を覗き込み、窓の内側をじっと眺めながら、見ているのは家の間取りではなくて、人々の姿、生活でした。家の歴史と変遷を追いながら、地道に生きていく人々の逞しさを感じています。
読了日:04月13日 著者:J.パトリック・ルイス,ロベルト・インノチェンティ
消えた王子(下) (岩波少年文庫)消えた王子(下) (岩波少年文庫)
脇役ラットがいいですね。気高いものに憧れる気持ちが満たされたとき、ぐんと彼は成長します。ラットの成長の物語がおもしろかった。
読了日:04月12日 著者:フランシス・ホジソン・バーネット
消えた王子(上) (岩波少年文庫)消えた王子(上) (岩波少年文庫)
『小公子』に夢中だった子どもの頃にこの本に出会えていたらねぇ。
読了日:04月12日 著者:フランシス・ホジソン・バーネット
リヴァトン館リヴァトン館
・・・でも、過去の事実は、どんなにしても変えることができない、と知りつつ、いつのまにかそれが起こらなければ、と考えても仕方のないことをつい思ってしまいます。ハートフォード家の三兄妹の『ゲーム』がとても素敵でした。エリナー・ファージョンの子ども時代の『ゲーム』と被るものを感じて、わくわくしました。あの豆本、手にとって見てみたい。
読了日:04月11日 著者:ケイト モートン
精霊たちの家 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-7)精霊たちの家 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-7)
この物語を構成する人々の人生の濃さには驚くばかりです。強い印象を残して去っていったたくさんの登場人物たち。誰の人生だってかけがえがない。そうして続いていく歴史の遥かなこと。名も忘れられた先祖たち、ゆかりの人々が、精霊となり、わたしたちを見守っているような気がします。
読了日:04月09日 著者:イサベル・アジェンデ
ハーブガーデン (物語の王国 10)ハーブガーデン (物語の王国 10)
ハーブガーデンから連想するのは秘密の花園でした。だれかが秘密の花園の鍵をあけなくてはいけないのだとしたら、それは自分しか居ないのでした。人と繋がることは、こわいし、すごくたくさんのパワーが必要だけど、希望にも繋がるのですね。
読了日:04月06日 著者:草野たき
木はえらい―イギリス子ども詩集 (岩波少年文庫)木はえらい―イギリス子ども詩集 (岩波少年文庫)
六人の詩人たちが、子どもの歌をうたう。思わずほくそえんでしまう。ああこんな子いるな。そうだこんなこと思ったよね昔。喜びと同居する不安感や醒めたまなざしなどもちらほらとまじり、なにもかもいっしょくたにして、子どもの日々でした。
読了日:04月06日 著者:
こどもたちは知っている―永遠の少年少女のための文学案内こどもたちは知っている―永遠の少年少女のための文学案内
こどもというキイワードを片手に古今東西の名作を追いかける。こどもは、あるときには作者自身の似姿であり、あるときには作者が憂う社会の姿であり、またあるときにはめざすべき理想郷でもあるのだ、と思いました。こどもは、社会と人々の心の豊かさの鏡なのでした。そうして、また読みたい本リストがぞろぞろ増えてしまいました。
読了日:04月05日 著者:野崎 歓
砂漠の物語砂漠の物語
悪魔の砂漠の無情さ。それなのにはっとするほどの美しさも感じるのです。魅入られてこの地に根をおろす人たちがいる。人、動物、の区別なく、誠意を尽くすべきは、同族の隣人たちではなくて、もっと大きなものなのだ、とこの本は厳しく告げます。生き残る、ということだけがすべて。それは自分が、ということではなくて、命が、でした。
読了日:04月04日 著者:郭 雪波
アメリカの61の風景アメリカの61の風景
本の中を吹き抜けていく風をいっぱいに吸い込むようにして読んでいました。エッセイというよりやっぱり詩、ですね。図書館に返却するにあたってたくさんの付箋をはずすのが寂しい。いずれこの本は買おうと思いますが、急ぎません。猫がいるような本屋さんで、記念にしたい日に買おうと思います。「本屋がなくなっても、本屋の思い出は本のなかに残る」と長田弘さんが言っているから。
読了日:04月03日 著者:長田 弘
女中譚女中譚
レトロで、薄暗くしけっぽいような雰囲気の中に耽美なあれこれをちらつかせる。美しい文章だな、と思う。凄さと同居しているユーモアがいい。アキバのメイドと繋げたのもおもしろかった。ほろ酔い加減でゆるゆる読んでいく楽しさ。読んでみたいな、もとの物語を。
読了日:04月02日 著者:中島 京子
勇気の季節 (ハヤカワ・ノヴェルズ)勇気の季節 (ハヤカワ・ノヴェルズ)
主人公たちのハイスクールデイズには、きゅんと胸にくるようななつかしさがあった。ジョージ、アビー、そしてジェイソン、それぞれと主人公テリーとの関係がどれも心に染みます。・・・痛快で爽快な物語ですが、泣きたいようなせつない思いも同時に味わっていました。
読了日:04月01日 著者:ロバート・B・パーカー

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