夢の彼方への旅

夢の彼方への旅夢の彼方への旅
エヴァ・イボットソン
三辺律子 訳
偕成社


緑がむせかえるような密林の極彩色の蝶や鳥、花。どこかにひそんでいるにちがいないワニ。虫。熱帯のべたつく空気。
ゴム栽培により巨額の富を得た農場主たちによって密林に建設された近代都市。
密林とモダンな都市(1910年としての)が混ざり合った不思議な空間ができあがっています。
こういう舞台で繰り広げられる物語は、少し現実離れしていたほうが断然おもしろいのです。


期待を裏切らないおもしろさでした。
ストーリーは次々に劇的な山場を迎え、はらはらしたりどきどきしたり。冒険とロマンはたっぷり。
登場人物たちの性格がはっきりしていて、
まさにまさに、の敵役がいて、悪巧みといったらこうでなくちゃ、という感じの悪巧みをちゃんと考えてくれてるし。
冒険心と自立心にとんだ若いマイアの少し危なっかしい行動力と、しっかりとした安心感のあるミントン先生のコンビは最強で楽しいです。
人物像、やや一面的な感じもしますが、それもこの濃い冒険物語には相応しいように思いましました。
物語のおもしろさを思い切り堪能しました。エイキンなど昔の児童文学を思い出してわくわくしてしまいます。
いろいろあっても、嬉しい結末が待っている、という絶対の信頼を寄せて読めるのです。


『小公子』の劇がすてきな味付けをしてくれています。・・・そう思って見れば、あら、バーネットさんの物語があちこちに仕込まれているのではないかしら。
マイアの生い立ち・境遇は『小公女』を思い浮かべるし、フィンとマイアの出会いは『秘密の花園』を彷彿とさせます。
そう思いながら物語を見回せば、ストーリーのおもしろさだけではなく、あちこちに遊び心のある仕掛けがほどこしてあることに気がつくのです。
楽しいな。