木はえらい―イギリス子ども詩集

木はえらい―イギリス子ども詩集 (岩波少年文庫)木はえらい―イギリス子ども詩集
アラン・アールバーグ/マイケル・ローゼン/ブライアン・パテン/
キット・ライト/スパイク・ミリガン/ロジャー・マッガウ
谷川俊太郎川崎洋 編訳
岩波少年文庫


アラン・アルバーグ、マイケル・ローゼン、ブライアン・パテン、キット・ライト、スパイク・ミリガン、ロジャー・マッガウ。
六人の詩人たちは、1970年ごろに現れた「新しい詩の波」の詩人たち。
これまで、イギリスの児童詩の中心は、ウィリアム・ブレイクに代表されるような抒情詩や、教訓詩だったそうです。
「新しい詩の波」は、簡単に言ったら「悪ガキの詩」で、イギリスの子どもたちに圧倒的に支持されたという。
「悪ガキの詩」ってどんなふうなの?と言ったら……
たとえば「なんで学校いかなきゃならないの」と、子どもに尋ねられたら何と答えようか?と、自分なりの答えを準備してから、アラン・アルバーグの詩を読んでみたらいいと思う。子どもたちが圧倒的に支持するのもわかる。


六人の詩人たちが、子どもの歌をうたう。
原詩はちゃんと韻をふんでいるのやいないのや、があるそうですが、堅苦しいことは脇に置いて楽しみたい。
ああこんな子いるな。そうだこんなこと思ったよあのとき。
子どもが読んだらやっぱり笑うかな。


マイケル・ローゼンの詩『物知り博士』は、
「物知り博士 物知り博士」という呼びかけから始まるあれこれのよもやま相談とその回答の数々でつづられた詩。
日本だったらさしずめすっごく短い「彦一とんち話」みたいな珍回答が楽しい。
最後の連がお気に入り。

物知り博士 物知り博士
うちのオウムはしゃべりすぎるんです


いい本を読ませなさい


ブライアン・パテンの詩『私は誰でしょう?』は、詩というよりなぞなぞ。
ほんとだ、なぞなぞって、詩なんだ。
特に古いなぞなぞは、そのリズムや構成の見事さからフレーズをそのままくずさず歌うように暗唱しているもの、ありますよね。


マイケル・ローゼンの『この世の終わり』もいい。
「でも子どもはこの世の終わりと思ってるんだ」に神妙にうなづいてしまう。
大きくなるまでにどんなにたくさん、この世のおわりがきたことか。
数々のこの世の終わりにどんなに泣いたことか。
そのほとんどは覚えていないけど。
ただ「この世のおわりってわけじゃないんだから」という大人のあきれ顔だけ覚えてたりして。


キット・ライトの『デイブ・ダートのクリスマス・プレゼント』に思わずにんまり。
君のクリスマス・プレゼントを開けることはきっとみんな遠慮すると思うけど、用意するのはすごく楽しそう。悪ガキめ。


楽しい詩ばかりじゃない。ロジャー・マッガウの『夢ぬすびと』やスパイク・ミリガンの『少年兵の話』にどきっとする。
子ども時代は必ずしも黄金の時代ではないのだ。