ゲド戦記外伝

ゲド戦記外伝ゲド戦記外伝
アーシュラ・K・ル=グウィン
清水真砂子 訳
岩波書店


ゲド以外(ゲドが出てくるのもあり)のアースシーの物語を五つ(+アースシー解説)読みました。
様々な時代、様々な主人公たちと物語に出会い、この世界の厚みと幅が広がったような気がします。


4巻『帰還』がフェミニズムの物語だ、と強く感じたのですが、このテーマは、この巻の様々な物語の中にも形を変えて繰り返し語られます。
ロークの学院の始まりが主に女たちだったことや、オジオンの師匠の師匠が女だったということが印象的です。
アニエブ、モエサシ、ダークローズ、メグミ、トンボ・・・この本の物語に出てきたさまざまな人物の中で、惹かれる人はみんな女性でした。
フェミニズム、と一言で言ってしまったけれど、あまりに声だかに描かれているように感じて、それがちょっとだけ気になりました。
もう少しさりげないほうが、わたしは好きなのです。
とは言っても、とてもおもしろかったのですが。


中で、好きだったのは『地の骨』でした。
老人の姿が最近気になって仕方がありません。
気になるからどうする、ということでもないのですが、いつか自分が辿る道なんだろうなあ、と思いながら、見ています。
偉大なことを為した所よりも、むしろ、ひとりで老いていくこと、
いろいろなことが昔どおりにいかなくなってきたこと(それはこの先もっと顕著になるだろうこと)
を静かに受け入れる姿に、わたしは惹かれます。
その静かな受け入れの中には大きな知恵や豊かさがあるように思えて、わたしもいつかそんな老い方ができるのだろうか、と思います。


最後の『トンボ』は、四巻『帰還』のころ、ロークで何が起こっていたかが語られています。
まぼろしの森の木々の葉がささやく「変容」は、何を表すのでしょう。
でも、きっと素直に受け入れられるものに違いない、と思っています。
そういえば、トンボはdragonflyなのですね。
次の巻『アースシーの風』への橋渡しの物語とのことで、この物語や人々が、どのように繋がっていくのか、楽しみです。