幼女と煙草

幼女と煙草幼女と煙草
ブノワ・デュトゥールトゥル
赤星絵里 訳
早川書房


禁煙、弱者である子どもの保護、が、過剰に奨励されている架空の都市を舞台にした風刺小説です。
どちらの理念も奨励されるべきもの、とは思いますが、何事も限度を越えるととんでもないことになってしまいます。


「僕」は、市の高級官僚で、仕事も私生活もそつなくやってきました。
しかし、喫煙をやめるつもりはまったくないし、子どもなんて大嫌い。
そんな彼が、ひょんなことから無実の罪を着せられてしまった。
四面楚歌のなか、どうやって彼は現状を打破するのか・・・


一方、死刑を宣告された囚人が、当然の権利として、処刑前に「最後の一服」を所望。
ところが、刑務所内禁煙の規則のもとに却下されかけて、そこからこちらも波乱の展開・・・


そこに、奇妙なテロリストによる事件が絡んできます。


世論の波も上手に乗れば、大きな力になるけれど、さかのぼるにはものすごいエネルギーが必要、というか、ほとんど無理かも。
一見正しいように見えるものが、実はおかしなことになっていないか、
世論の波に呑まれながら、自分の目がどこかで曇ってしまっていないか・・・そんなことを思いました。
おっかないのは、絶対的価値観みたいなものができてしまって、
そちらの方向を向かない人間はおかしい・間違っている、ということになってしまうこと。
「絶対」という感覚がおかしいです。
なにもかもが、人の命の尊厳さえも茶番のように思えてきて、もはや笑ってなんていられませんでした。


ブラックユーモア、なのでしょうけど、わたしには強すぎました。
後味悪すぎる。
・・・と思って読了したってことは、作者の思う壺でしょうか。うらみます。
というか、「この本はどうもわたしには・・・」と思ったところでやめなかった自分、おろかでした。へろへろです。
口直し、何を読もうかな、と考えているところです〜。