ラブ、スターガール

ラブ、スター・ガールラブ、スターガール
ジェリー・スピネッリ
千葉茂樹 訳
理論社


「スター・ガール」の続編です。レオの前から姿を消したスターガールのその後の一年間をスターガール視点で描きます。
この本はスターガールが書いた(日記風の)レオへの出さなかった長い手紙なのです。
タイトル「ラブ、スター・ガール」は、手紙の結びの言葉。


アリゾナからペンシルベニアに引っ越したスターガールは、高校をやめて、再びホームスクーリングを始めていました。
レオ目線で書かれたスターガールと、スターガール自身が書いたスターガールはこんなにイメージが違うのか、とびっくりでした。
そして、レオとの別れにこんなにも苦しんでいる彼女は、今までの突飛なスタイルや行動とは裏腹に、むしろ誰よりも古風な少女でした。
この本は最初から最後までレオへの思いがいっぱい詰まっていました。
すっかりトーンダウンしてしまったスターガールをスターガールらしく盛り返させてくれたのが、ドゥーツィーという5歳の女の子。
スターガールの妹分。
無邪気にストレートに突き進むドゥーツィーに引っぱられるようにして、スターガールは表面から少しずつ盛り返していきます。


この町でスターガールはドゥーツィーとともに新たな友情を築いていきます。
緑色のぽんぽんの帽子をかぶってさまよい、いつも「僕を探していた?」と訊ねるアーノルド。
亡き妻グレースの墓に日がな一日夢見るように寄り添い続けるチャーリー。
喧嘩っぱやくて、自分のことを最低の子どもだと思っている12歳のアルビナ。
広場恐怖症で家から一歩も出ることができないベティー・ルー。
ハーレムを従えた万引き少年ペリー。
どの人もみんな「変人」。スターガールと同じ「変人」です。
たぶん、「みんな」の中では、うまくやっていけない人たち。どの人たちも繊細で優しく、臆病です。
彼らの繊細さ、優しさが、スターガールと響き合う。共鳴する。
スターガールと彼ら一人ひとりが、互いに友情を築いていく丁寧な姿は、まるで美しい音楽のようです。


スターガールは「みんな」を捨てて、ホームスクーリングに戻ってしまった。
一種の退行のようにも思えますが、そうではなかったみたい。
スターガールはスターガールなのでした。
そして、深く広く学べる場所、自分を活かせる場所は、学校の外にもちゃんとあるのだ、と思わせてくれました。
「みんな」というひとくくりの団体は、この本からは消えています。(ミツバチたちにその片鱗がやや垣間見える程度に)
「みんな」もまた一種の変人と言えるかもしれない。
としたら、変人なんていない。みんな個性的なひとりひとり。そんなふうに思えてきました。


大好きな場面があります。
夜明け前の暗闇の道。スターガールが歩く道。
この道に沿って、日を追うごとに明かりが増えていくのです。
この明かりの温かさ、つながり・・・なんて美しいのでしょう。
スターガールのワゴンの小石が増えていくように明かりも増えていくよう。
共感と思いやりの明かりです。

この本は、夜明け前の場面がとても多かった。
牛乳を配達するお父さんのトラックについていく場面も好きです。
夜明け前って不思議な時間ですね。
昼間見慣れたものがまるで違ったふうに見える、あるいはこの時間でなければ見えないもの。
それは昼間よりずっとピュアなものかもしれません。
そして、そして、それは、花開く寸前の16歳のスターガールの現在とオーバーラップしたりもするのです。


スターガールの丘の上で作るカレンダーが素晴らしいのです。これも音楽のよう。
ずっと並んで弧を描くゴムべラの列・・・というとなんだかおかしいのだけれど、見てみたい気がします。
このカレンダーは冬至にクライマックスを迎えるのですが、ここからが大変、たくさんの爽やかな涙があふれてしまって。
レオに寄せるスターガールの手紙の帰結点、そうか、そうかあ。スターガール、あなたはほんとに・・・。
思えば最初からそうでした。
前作からそうだった。
あなたはいつも深く内省して、誰にも思いも寄らない最高の突破口を見つけ出してくれた、爽やかに。
これからあなたはどんなに素敵なひとになるのでしょう。
なんともいえない読後感。
読んでよかった。確実にパワーアップしたスターガールに乾杯です。

前作スターガールのときにも思ったのでしたが、この本の装丁がいいです。ほら、二冊並べるとこんなに素敵!

スターガールラブ、スター・ガール