まってる。

まってる。まってる。
デヴィッド・カリ
セルジュ・ブロック
小山薫堂 訳
千倉書房


・・・をまってる。
・・・をまってる。
・・・をまってる。
待って、待って、生まれたときから年をとるまで・・・
ワクワクしながら待つ、イライラしながら待つ、待ち遠しい気持ちで待つのや、できればこなければいいのにと思いながら待つのや・・・
待って待って、散々待ったのに、あっというまに通り過ぎてしまったのや、待っていたのとちがうのがやってきたり・・・
生きることを「待つ」事と考えたことは今までなかったけれど、そうか、ずっと待っていることばかりなんだ。
そして、こんなにいろいろな「待つ」があって、たくさんのドラマがある。


「待つのって嫌い」と言いながら、なんてたくさんの「待ち」を経験しながらきょうまできたのだろう。
いいことも悪いこともあるけど、その後に起こるはずの何かを待っている。
一つ待って、また待って、もうひとつ待って・・・どきどきしながら。


ひょうひょうとしたペン画。
横にながーい本で、どこかとぼけたイメージです。
こんなふうにひょうひょうと待つなら、辛いことを待つときも、上手にやり過ごせるかもしれません。


画面を唯一彩り、目を引くのは、美しい赤い刺繍糸。
「待つ」気持ちを形で、長さで、絡み具合で、表現しているのです。
これが、とってもおしゃれで楽しいのですが、
その線の動きを見ると、ああ、そうだねえ、このときの気持ちを形にしたら、こんな感じだねえ、と思えてくるのです。
赤い糸そのものが感情を持って自在に生きているみたい。
あのこと。このことを待つとき、わたしの指先からこんな糸が伸びているかもしれない。
嬉しいことを待つとき、嫌なことを待つとき、あのひと、このひと、こんなことを待つとき・・・


そして、あちらでもこちらでも、いつでもどんなときでも、忍耐強くわたしを待っていてくれる人もいるのだ。
ずーっと生きているあいだじゅう。そう思うとやっぱりうれしい。
だから、わたしも待とう。にこにこして「待った?」と言いながら駆け寄ってくるものたちを。