特急おべんとう号

特急おべんとう号 (福音館創作童話シリーズ)特急おべんとう号 (福音館創作童話シリーズ)
岡田よしたか
福音館
★★★★


ラソン大会が始まるのだ。
だけど、スタート地点に並んでいるのは、おにぎり、ブロッコリー、塩鮭、ハンバーグ・・・
世界で初めて、おべんとうのごはんやおかずさんたちのマラソン大会なんです。
よーいどんで、テレビのアナウンサーなみの実況中継と、マラソン参加者(?)たちの関西弁の掛け合いとで進む物語は、
シュールでひたすら楽しいです。


納豆がべたべたするからなかなか先に進めなかったり、
はるさめとスパゲッティがデッドヒートのあげくにからまっていたり、
けんかしてるやつがいたり・・・
おべんとうのおかずにならないようなのが走っていたり、ねこが乱入してきたり・・・
突然のハプニングで降り出した雨は、レース展開にどんな影響を与えるか・・・
お弁当のおかずたちの絵には、顔が描かれているわけでもないし、手足がついているわけでもなくて、
おにぎりは、もうそのままおにぎりだし、エビフライはエビフライなのですが、不思議に感情移入できてしまう。
性格がしっかりあって、エビフライはエビフライらしいし、たいやきはたいやきらしいのです。おかしくて笑っちゃいます。


ラソンに乱入した猫に降りかかった災難の話(これ、好きです。あの子ども思いの親金魚が^^)、
電車に乗って遠足にいくおべんとうたちの話、どれも荒唐無稽で、エネルギッシュ。
そして、こういう話に、関西弁って、なんでこんなに似合っちゃうんだろう。


お弁当のおかず、といっても、きれいでおしゃれなお弁当ではないのがいいです。
塩鮭やめざし、金時にんじん、エビフライ、梅干おにぎり、ゆでたまごに卵焼き、厚揚げ・・・
どちらかと言えばドカ弁に似合いそうなちょっと古風な定番の元気な具材たちが、このはちゃめちゃストーリーにはお似合いなのです。
納豆〜、入れるか、弁当に? でもなぜか違和感ない。


そうそう、子どもと話をしていると、ときどき、こんな感じの話をした。
身近なものたちのありえない大冒険。ノリノリで、どこまでエスカレートするのかな、ってくらいに荒唐無稽な世界を描いて見せてくれた。
聞きじょうずがそばにいると、目を輝かせて奇想天外のうんと楽しいお話をつくり出してくれた。


子どもの話だったら、話はどんどん大きくなっていって、おさまりがつかなくなるところだけど、
わあっと盛り上がったあと、お弁当箱に行儀よくならんで収まってしまうなんてお見事。
スマートで、粋なご挨拶がニクイなあ。
ああー、気持ちよく元気に笑った。楽しかった〜。