反撃

反撃 (teens’ best selections)反撃
草野たき
ポプラ社
★★★★


バトンを渡すように、しりとりをするように、主人公たちが繋がっていく。
連作、というわけでもないけれど、
次の主人公が、先の短編の一番最後に、先の主人公とちょっとだけ触れ合って、次の話に引き継がれていきます。
中学生女子を主人公にした5編。


どの子の物語も、ああ、そんなことがあったかもしれないなあ、と自分の過去を探したくなるような、
でもできれば蓋をして知らん顔を決め込みたいような・・・
それを取り出して面と向かいあいなさい、と言われたら思わず苦笑いしてしまいそうな・・・そんな痛い日々。
どの子も少しムリしている。ムリしてもちっともかっこよくなくて、ちっともすてきじゃなくて、ちっともいいことなくて・・・
彼女たちは無理することで何かを懸命にさがしている。
でも、そんなふうにしたら、さがしものから遠くなっちゃうかもしれないよ、とおばさんははらはらしてしまう。
どの子も少しおばかさん。と思う。
だけど、だれかが「おばかさんね、この子は」と言うのを聞いたら、わたしきっと、この子達をかばいたくなる。
「そんなことないよ」って。
だって、どの子の中にも自分の若い日が見えるのだもの。せいいっぱいのエネルギーは泥臭くて、せつないくらい愛しく思えるのだもの。


タイトルは「反撃」
この子達が、自分の痛みに立ち向かうとき、反撃が始まる。
それはほかの人から見たら「どこが反撃なの?」「何が変わったって言うの?」というくらいのささやかさ。
だけど、あきらかにちがうのは、この子たちが、それぞれに、ありのままの自分を認めようとしていること。
それぞれのやりかたで。それぞれの言葉で。
ここから反撃が始まるのだ。それはなんだか爽やかで気持ちがいい。
まわりからおかしな風に見えても、変な子、と思われても、自分だけがわかっていればそれでいい。
そして、この本に共感する読者(わたし)がにこっとできたらそれでいい。
――が・ん・ば・れ!