クグノタカラバコ

クグノタカラバコクグノタカラバコ
いとうひろし
偕成社
★★★★


>もし皆さんが、クグノタカラバコ、つまりクグの博物館にいくことがあったら、ならんでいる宝物をさっとみただけでかえってしまわないでください。ガラスの戸棚に隠れるようにして立っている、クグをみつけだしましょう。そして、「これはなに?」「あれはどこでみつけたの?」ときいてみてください。クグはよろこんで教えてくれます。クグの話をきけば、ありふれたガラクタがかがやきはじめます。博物館が大きな宝箱にかわるのです。
机の引き出しなどに大事にしまっていた子どもたちの宝物はみんなまだあるだろうか。
どれも他人が見たら半端もの、がらくた。でも、集めた当人にとっては、ひとつひとつの物にちゃんと物語があるのです。
物を見ればちゃんと物語がよみがえる。だから愛着がある。捨てられないのです。


クグノタカラバコは、長い間にクグの集めた物の博物館。
世界中を旅したクグが、世界中から持ち帰った宝物の博物館なのですが、
だれもが納得するような世界じゅうらしさ(?)はひとつもないのです。
安物のプラスチックの水鉄砲(水が入っている)、食パン一切れ・・・そんなもの。
どこにでもありそうで、どう見ても何の意味もなさそうながらくた、
燃えないごみの日にごそっと袋につめて出してしまいそうなものばかりが大切に展示されています。
でも、そこに篭った物語を聞けばそれはやっぱりがらくたではなくて、まぎれもない宝物なんだ、と納得するのです。


どこからこんな物語がわいてくるのでしょう。
奇想天外なくせに、とぼけたユーモアにあふれた、物にまつわる物語。くすっと笑ってほのぼのとして、幸せな気持ちになります。
(背中とおなかに食パンを一枚ずつ結びつけた犬は、今思い出しただけで笑いがこみ上げてきます^^)
物に篭った、その物だけが持つ物語を忘れないでいたら、それはこの世でたった一つの宝物になるかもしれません。
そんな物語をたくさん大切に持っていたら、豊かな気持ちになれるにちがいない。
物は壊れ、いつか消えてしまうけれど、物語はいつまでも残ります。
忘れていたこともよみがえるような気がします。
覚えていたいなあ。
物の姿が少しずつ変わっても「思い出はうすくなりませんよ」というのがいいな。
「ホントの話かホラ話か、決めるのはおまえ自身さ」もいいな。
・・・ホントかなホラかな? どっちでもいい。
「こんなことがあったらいいな。あったら面白いな」と思いながら暮らすほうが断然楽しいもの。