六人の探偵たち

六人の探偵たち (アーサー・ランサム全集 (9))六人の探偵たち (アーサー・ランサム全集 (9))
アーサー・ランサム
岩田欣三 訳
岩波書店
★★★★★


再読。
夏の終わりのノーフォーク湖沼地方。
オオバンクラブの仲間が集結です。
ただ、双子の女の子ポートとスターボートは不在のため、「死と栄光号」のジョー、ビル、ピートの三人、ティットマウス号のトム・ダッジョン。
ここにドットとディックのカラム姉弟が加わったときには、この地方あちこちで繋いであった船が流されるという事件が勃発しており、
そこにいつもたまたま居合わせた「死と栄光」号の三人に犯人の嫌疑がかけられていたのでした。
オオバンクラブは存続の危機に直面していました。
真犯人は別にいる。真犯人を自分たちで掴まえることこそ濡れ衣を晴らす一番の方法、とドット。
たちまち、オオバンクラブのクラブハウスはスコットランドヤードに変身。
バラブル夫人の小犬ウィリアムも警察犬に変身です。
わたしは、これを読みながらケストナーの「エーミールと探偵たち」を思い出していました。
子ども主体のミステリー。最初から最後まで、おもしろいやら、歯がゆいやら(笑)


最初、状況がつぎつぎに不利になっていく過程は、辛いのですが、そこここに子どもたちの世界らしい、
そして、川に生きる少年たちらしいさまざまな楽しみがちりばめられていて、ひとつひとつのエピソードをたっぷり楽しみました。
抜けそうで抜けないぐらぐらするピートの歯。
夜中のうなぎ捕りの楽しみ、キャシャロット号で三人力を合わせて釣り上げたオオカマス
すべてが、子どもたちの夏の冒険の日々。
嬉しいはずの出来事が、ふたを開けてみれば自分たちに不利な疑いを生むことになっていた、など、物語の筋立ても楽しい。


四面楚歌の中、ひとつひとつ犯人が残していった手がかりを集め、整理していく過程は、行きつ戻りつ、犯人にたどり着くのか、
たどり着いたとしても、それをどうやって証明したらいいのか・・・物語作家(?)ドットの想像力が光ります。
もし自分が犯人だったらこのあと何をするかしら?
こつこつとへこたれず、あきらめず、犯人を追い詰め、
やがて、この子たちを犯人と決め付けてほかの可能性を考えてみようともしない警官のテッダーさんと弁護士のフランクおじさんの前で
証明してみせるところは最高。
どんなに差し迫った事態に陥っても、このシリーズは、必ずすーっと抜けるようなさわやかな読後感が約束されている、と思えば、
「よしよし今に見てなさいね」と子どもたちを見守り続けられます。
ゆっくりと進行する物語は、ゆっくりと楽しみましょう。


ところでこのシリーズの悪役キャラって、なんとなくみんな似ているんですよね。
オオバンクラブの無法者」のマーゴレッタ号の乗組員も、「ヤマネコ号の冒険」のブラックジェイクも、そしてこの本の悪役君も、
悪巧みはするのですが、すべて力技(?)で、あんまり頭はよくないんですよねー。
そのせいか、とことん憎めないのです。