なみ

なみ (講談社の翻訳絵本)なみ
スージー・リー
講談社
★★★★★


横長の文字なし絵本です。
浜辺を女の子がうれしそうに駆けてきました。
でも、波打ち際でストーップ。
怖いのかな。
波が引いていくととたんに強気で威嚇してみせるる女の子。

女の子の大きな表情がいいんです。
女の子のまねをするみたいに、あとをちょこちょこついてくるかもめたちも、なんとも愉快。
でも、もっとすてきなのは、波が生きていること!
まるで遊びに誘いたくてちょっかい出すガキ大将みたいな波です。


一見、見開きいっぱいに描かれているようだけれど、右ページと左ページは、微妙につながっていません。
右ページは我が物顔をしている波の世界。
左ページは女の子のいる砂浜。
左右のページのあいだにはくっきりと壁があるかのよう。
この壁は、波の前で怯む女の子の気持ち。
左ページにいれば安心なのです。波、ここまでは来られないから。
いくらでも強気で、あかんべしたり、おこってみせたりしていられる。
なんだか、はじめて会った強そうな(?)友達を、虚勢張って背伸びしてけん制しているみたい。

寄せて返して、押して戻してくる、なんだかおっかないもの。
いつまでこのままかな、と思ったら・・・

・・・
・・・
いつのまにか見えない壁はなくなった。すっかり混ざり合っちゃって、もう右も左もないのです。
左右に大きく広がる一面の海なのです。
混ざるってすてきだ。

はじめての海では波が怖くて、熱く焼けた砂浜で固まっていたちっちゃなあの子のことを思い出します。
もう、夏、終わりですね。やがて、海辺も静かになるのでしょう。