読書の腕前

読書の腕前 (光文社新書)読書の腕前
岡崎武史
光文社新書
★★★★


>本はじわじわ効いてくる。あるいはそのときには気づかなくて、後になって考えると、ちゃんと効果があったんだな、とわかる。または、効き目がなくても、いつのまにか溶けて、静かに体内に吸収されてしまっている。本ってそういうものだろう。

>なにか「ためになる」ことがないと、本に手を出さない姿勢もいびつだ。それもこれも、「本を読む」ことのほんとうの楽しさを知らないから、いつまでたっても即効性を謳う本ばかりに手を出してしまうのである。本は栄養ドリンクではない。

なるほどなるほど、と素直に共感する言葉ばかりでした。
そして、谷川俊太郎の『「ん」まであるく」からの引用。
「楽しむことのできぬ精神はひよわだ。楽しむことを許さない文化は未熟だ。詩や文学を楽しめぬところに、今のわたしたちの現実生活の楽しみかたの底の浅さも現れていると思う」
「楽しみはもっと孤独なものだろう」
との言葉に、ああ、こういう考え方はとっても美しいな、豊かだな、と思えて、この本も探してみたくなりました。

また、本を読まない理由に「本を読む時間がない」というのは違う、時間なんてその気になればいくらでも作り出せるはず、時間がないのではなくて「その気がないのだ」との指摘ににやーりとしてしまいました。これはそのとおり。で、ほかのことにも言えますね。「〇〇する時間が無いのよ、忙しくて」とわたしは言うのです。家族に頼まれた用事を断るとき。それから、草ぼうぼうの庭や畑を目の前にしたとき。でも、本を読む時間はあるんですよ、ちゃんと(爆) はい、時間がないんじゃなくて、「やりたくない」のでした。

「ベストセラーは十年後、二十年後に読んだほうがおもしろい」も納得。ベストセラーを紅茶キノコナタデココウーパールーパーと並べて断ずるあたり、思わず笑ってしまう。
でも・・・ね、気になるのよ。みんながおいしいって言うものはとりあえず食べてみたいのよ。

「人に本を薦めないし、人から薦められても読まない」という言葉も納得できるものでした。薦めるのは難しいかもしれないですね。相手のことを良く知っていて、普段どんな本を読まれるのかを知って、その分野の本を自分もかなり好きだったりしないと。
でも、薦めてもらうのは、うれしいです。矛盾してますかね。薦めていただいた本は、そのときすぐに読まなくても、どこかにインプットしておきます。案外、読む機会はずっとあとになってめぐってきたりするのです。そして、その本から、薦めてくださった方の顔を思い出して「ああ、〇〇さんの本」と思ったりするのだもの。
・・・勧めたり薦めなかったりは、やはりその人その人の性格にもよるのかもしれないです。
すてきな読書友達のみなさん、いつもありがとうございます。

それにしても、この本に出てくる本読みさんたちのすごさには驚いてしまいます。
本の虫エリザベス(絵本『エリザベスは本の虫』)もびっくりの本の虫ぶり。この本の著者からしてすごいです。年間三千冊の積読本って・・・☆★☆★☆
それから、天井も壁も床まで本でできているおうちを持っているのはどなたです?(本の背表紙を敷き詰めた廊下を歩くって、どんな感じなんでしょう。考えられん)

ここには様々な本が出てきましたけど、そのほとんどが未読。さらにタイトルや作者名さえ聞いたことがないものが多数。・・・こういう読書案内(ではないですけど、これは)は、悲しいなあ〜。レベルが違いすぎるんです。ここまで知らない本だらけだと、読みたい、というよりどこから手をつけたらいいんだ、と呆然となってしまう。自分の無知が悲しくなってしまいます。

とりあえず、読みたい本は、
「読書のデモクラシー」 長田弘 (岩波書店
「『ん』まであるく」 谷川俊太郎 (草思社
エリック・ホッファー自伝」 エリック・ホッファー (作品社)