hi mi tsu ki chi ヒミツキチ

hi mi tsu ki chi ヒミツキチhi mi tsu ki chi ヒミツキチ
西宮大策
小学館
★★★★


野原、萱原、河川敷、運動場や公園の片隅、細い路地裏、忘れられた裏庭に、
子どもたちはなんて巧みに自分たちの王国を作り上げるのだろう。
それは、他人を拒絶する。
同盟者だけの秘密。なんとわくわくする秘密だろう。
ごくわずかな同盟者たちは共犯者でもあり、同じ世界を夢見て、小さな世界を充実させていく。
その機能にも居住性にも、うっとりしてしまう。
どんな城、どんな砦にも勝る堅牢さを誇るこれら秘密基地。
きっと作っているときが一番充実する時間のはず。
そして、ある一定のときを経ると、惜しげもなく捨てられていくに違いない・・・
だから、秘密基地、という言葉がきっとこんなに甘美なのでしょう。


すてきな写真集です。
「ようやく見つけた基地の数、20個。そのうちの13個を収録した」という西宮大策さん。
よぉくみつけたねぇーと舌を巻きます。
秘密基地というだけあって、
周囲からは巧みに隠されているこれらの基地を見つけ出すには、まず子どもの目にならなければいけないでしょう。
がらくたの荒れ山の中に、ひそかに宝が眠っていることを見通す目を持たなければならないでしょう。


写真集を眺めながら、私は自分もまた基地つくりをした。
汗とどろのにおいのする子どもに戻ったような気がしました。
それから、よく知っている子どもたちのことを思い出しました。
この基地の向こうにあの子たちの顔が見える。あの子達の足音が聞こえる。そんな気がします。
それから、宝探しも楽しんだのです。
この本を眺めながら、著者とともに、宝島の地図を描いているような気持ちになりました。


少し暗くて、なぜか後ろめたいような甘美で幸福な秘密。
秘密基地という言葉にどきどきするのはそんな気持ち。