年とったばあやのお話かご

年とったばあやのお話かご (ファージョン作品集 (1))年とったばあやのお話かご (ファージョン作品集 (1))
エリナー・ファージョン
石井桃子 訳
岩波書店
★★★★★


再読。
年とったばあやが夜、寝入る前の四人の子どもたちに、彼らの靴下をつくろいながら、その靴下の穴に見合った長さのお話(大きな穴なら長いお話、小さな穴なら短いお話)を、かたって聞かせます。

このばあやはこの家の四人の子のおかあさんのばあやであり、おばあちゃんのばあやでもありました。どのくらい年をとっているのか誰も知りません。
ばあやのお話は、どれも、自分の思い出話として話されるのですが、それによれば、世界中の様々な国の王子様や王女様のばあやだったことがあり、食人種の酋長の子のばあやだったこともあり、グリムのぼっちゃんたちのばあやだったこともあり、そればかりか、遠く、力持ちのサムソンのばあやだったことも、海の神ネプチューンのばあやだったこともあるらしいのです。
お話は古今東西、どこにでもとびます。おもしろいのも美しいのも、煙にまかれたような気がするものもあります。
でも、どれも、小さなおねむの子どもたちがベッドで聞くのに相応しいやわらかく温かいお話ばかりです。靴下をつくろいながら、というのもいいな。

好きなのは「人間て ほんとにばかなものですね」
王子と乞食の物語を思い浮かべつつ、二人の子どもの子どもらしいいたずらが楽しくて、ほほえましいのです。そして、すてきなオチもいいです。

今までばあやがお守りをしたあかちゃんのうちで一番小さかったという「ラップランドの子リップ」のお話は、とっても短いのですが、読み終わった後、笑い出してしまいました。こんな人を喰ったようなお話もよいです。この日の靴下の穴はほんとにほんとに小さかったんです。このお話とおなじくらいに。

「棟の木かざり」、女の子のだーい好きな、愛らしいリボンが、これ以上ないほど愛らしく見えるお話はまたとない。読めば読むほどににっこりしてしまいます。

眠れない子、ただひとりのための最後のお話もよかったです。特別なお話に相応しい。ばあやがばあやになる前の女の子だったころのお話なんだもの。
こんなお話を聞かせてもらえるなら、眠れない夜もうれしくなってしまうのでした。

お話上手なばあやに育てられる子どもたちは幸せです。イギリスの古い子供の本の中にはたくさんのすてきなばあやがいましたが、このばあやも大好きです。