世界はうつくしいと

世界はうつくしいと世界はうつくしいと
みすず書房
★★★★


>暮らしに栄誉はいらない。
空の見える窓があればいい。


>あなたのものでなければ、他の
誰かのものでもない。バッハのねがった
よい一日以上のものを、わたしはのぞまない。


モノクロームの世界のすがたは、
どんな色彩あふれる世界よりも、
ずっと、ほんとうの世界に近いのだ。
(ここで思い出したのはエッツの絵本でした。 −ぱせり・注)


>穏やかに、称えられることなく、
みずから生きとおす、ということ。


>何ひとつ永遠なんてなく、いつか
すべて塵にかえるのだから、世界はうつくしいと。


>本は、本であって、本ではない。
誰もそう言わないが、本は、
あるときは歳月であり、記憶であり、
遺失物であり、約束であり、
読まれずじまいになった言葉が、
そのままずっと、そこにある場所であり、
それは、日々の重荷のように、
重い家具として、ここにあって、
人生と同じだ。


>明るさに、人は簡単に目を塞がれる。
夜の暗さを見つめられるようになるには、
明るさの外に身を置かなければならない、と。

あちらにこちらに散らばった言葉を切れ切れに集めて書き写してとっておく。
だけど、そんな権利がわたしにあるだろうか。
この詩集は難しい言葉は使っていない。
むずかしい風景は歌っていない。
むずかしい思想は語っていない。
使われているのは、私が普段話す言葉、普段聞く言葉だ。
だけど、この詩集を前にして、あそこが好きの、ここがいいの、と分解する権利がわたしにあるのだろうか。
「世界はうつくしいと」詩人は言っている。ひとことひとこと味わいながら、自分の身の回り、そして自分の来た道行く道の美しさに思いをめぐらす。ゆったりと。