小鳥の歌からヒトの言葉へ

小鳥の歌からヒトの言葉へ (岩波 科学ライブラリー92)小鳥の歌からヒトの言葉へ
岡ノ谷一夫
岩波 科学ライブラリー
★★★


小鳥の歌とヒトの言葉が並んでいる。タイトルに惹かれました。この発想の自由さに。科学、学問だけど、そこに心を遊ばせる自由さを感じるタイトルに。

ヒトの言語の起源のさまざまな謎を解明するためには、小鳥の歌が鍵になるかもしれない、と考えて、動物行動学・神経科学の立場から研究しているという。
小鳥の歌が人間の言葉と違う点は、まず、『意味』の欠如。だけど似ているところは、なんと、ともに文法がある、というのです。
――十姉妹の歌に文法(歌文法)があることを発見。人間の言葉の文法とは別の。

小鳥の文法はその言葉(歌)の意味とはほぼ無関係に成り立っているようです。小鳥の歌が人間の言葉の文法の起源になるかならないか・・・ということは人の言葉の文法の起源は、言葉が表す意味とは無関係かもしれない、という仮説ですよね。
文法の起源、なんてことも考えたことがなかったけれど、さすがにこの大胆な発想にはびっくりしました。
そして、小鳥の歌文法が求愛行動から生まれたらしいことがわかってきたそうです。そうすると人の言葉の文法の起源も?

>ジュウシマツの歌の有限状態文法が脳内でどう表現されているかを解明し、それが進化した理由として雌による好み(性淘汰)があるとし、ヒトの文法構造も性淘汰で進化した、という筋書きをうち立てた。あまりに大ボラである気はしたが、ひょっとしてほんとかもしれないとも思った。
これを、大ボラというか、夢というか。
大法螺のような仮説がなければ大きな発見もないだろう。夢もしぼむだろう。

この本は、たぶん、普通の人が普通に読んでもわかりやすく書いた本(のつもり^^)なのでしょうが、わたしには難しかったです。理解できないところがいっぱい。脳が理解することを拒否しているというか^^(ハダカデバネズミの本はおもしろかったんだけど・・・こっちのほうが少し高度? デバさんの本がわたしの限界みたいです)でも、内容には興味津々なのです。まだまだ研究は途上。この研究の先に何があるか知りたいものです。(ぜひもうちょっと噛み砕いて・・・)
それから、この研究を心から楽しんでいる岡ノ谷博士と研究グループの方達の夢が素敵だと思ったのでした。
えっと、この研究グループの学部は・・・文学部なんですよ!(千葉大学文学部科学研究科)
文学部の中に生物を使ったこんな研究をする科がある、ということも目から鱗? この囚われない発想の自由さ、おおらかさ(だけど研究は緻密です、もちろん)が、文系学部の中にあるというのは素敵な驚きです。